HOME > 法律コラム > 【新型コロナ対策】賃料減免と損金計上とした場合の寄付金課税・消費税との関連性
報道によると、国土交通省がテナントビルの所有者に対し、テナントに対して賃料を減免したとしても、その減免による損を税務上経費とすることが出来る、と通知したようです。加えて、近く国税庁からこの場合の具体的な取扱いについて、明確な見解が出される模様ですので、詳細は国税庁ホームページなどで確認してください。
新型コロナウイルスの影響で、多くの事業者が休業等せざるを得ない中、固定費であるテナントの賃料負担が更に事業者を苦しめることになるため、賃借人である事業者に対する支援として、このような通知がなされたと言われています。
ところで、この通知にあるような減免については、法人税においては原則として寄附金として取り扱われると言われています。法人税において、寄附金を支出した場合、支出額の一部しか経費になりません。寄附金は支出してもその見返りがありませんので、経費性に問題があるとしているのが法人税の取扱いなのです。
寄附金については、見返りを求めずに単にお金を寄付するだけでなく、債務を免除するなど経済的な利益を他人に与えることも含みます。結果として、賃借人である事業者を助けるために賃料を減免する、となると、通常は寄附金になると考えられます。
寄附金になってしまうと、賃貸人であるテナントビルの所有者もおいそれと賃料を下げられませんから、ある意味特例的な解釈として、寄附金にならないとされます。
ところで、賃料を減免した場合の消費税の取扱いについては、先の報道では特に触れられていません。この点、消費税は賃料を減額させた場合にはその減額させた金額をベースに課税され、免除した場合には、消費税は課税されないと考えられます。なぜなら、消費税は実際の取引金額に対して課税されるからです。
これに関連して、税務調査では賃料を免除するような場合には、いったん満額で賃料を収入した上で、その満額の賃料を贈与した、といった指導がなされることがあります。満額で収入したとなると、その分多額の消費税を課税できますから、このような指導がなされることがあります。しかし、当事者間でゼロにすると合意したのであれば、先の通り消費税は課税されませんので、しっかりと交渉する必要があります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。