HOME > 法律コラム > 人材派遣と不就労補償金の課税関係について税理士が解説
新型コロナウイルスの影響で、飲食店など休業せざるを得ない業種も数多くあります。休業するとなると、売上に関係なく発生する従業員に対する給与や家賃などの固定費が問題になりますが、これらと同様に、人材派遣を受ける場合の派遣料についても問題が生じます。
といいますのも、派遣先で休業があって派遣契約をストップするにしても、派遣会社は自社の社員として派遣社員を抱えていますから、急にストップするとなると、売上の減少はもちろん、その派遣社員に対する給与の負担などの実損害が生じるからです。このため、派遣会社が派遣先会社に、この補償を求めることがあり、それを不就労補償金といいます。
この不就労補償金について、消費税の対象になるか問題になります。給与と異なり、派遣会社への派遣料は消費税が課税されます。この派遣料と同様の支払いということで、消費税が課税されるのではないか、といった疑義が生じます。
この点、消費税は損害賠償金などには原則として課税されないとされています。と言いますのも、消費税は対価性のある取引を課税の対象にしているからです。対価性とは、お金を払う見返りがあることを言います。一例として、商品の売買は、お金を払うことで商品を貰えますから、対価性があることになります。
損害賠償金は自分が与えた損害を補償するために支払うべきもので、支払った結果、何かしらの見返りがあるものではありません。このため、原則として対価性はないとされ、消費税が課税されないとされています。
一方で、所得税は消費税とはまた異なる考え方をします。所得税においても原則として損害賠償金は課税されないとされていますが、個人事業主が受ける、必要経費を補填するようなものや、逸失利益に対する補償金のようなものは、事業所得の収入金額として課税されるとされています。このため、休業に対する補償である、持続化給付金は原則として課税されるとされています。
一方で、法人税については、損害賠償金は原則として課税対象になります。所得税とは異なり、法人税には原則非課税という考え方はないからです。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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