HOME > 法律コラム > 新型コロナウィルスに感染した従業員に対する見舞金の課税関係を解説
事故にあった従業員に対し、雇い主である法人が支給する見舞金は原則として所得税が課税されません。原則として、と申しましたが、それは「社会通念上相当と認められる」見舞金が非課税とされるからです。言い換えれば、見舞金として金額が大きすぎるものは給与と変わらないため、所得税が課税されます。
加えて、原則として見舞金に課税がないとしても、それを支給する法人としては、かなり神経を使います。というのも、税務上従業員に対して金銭を交付すると、原則として給与となり課税されるからです。
困ったことに、金額が大きすぎればアウト、適正であればOKとなる訳ですが、この適正な金額に基準がないため、本当に問題ないのか、頭を悩ませます。
対応策として、必ずやるべきことの一つに慶弔規程を作成することが挙げられます。ここで見舞金を支給する場合や、支給する金額を定めておく必要があります。
もちろん、定めた金額について国税が多すぎると認定することがありますが、国税も適正額については分かっていませんので、交渉の余地はあります。何より、このような規程もないのに見舞金を支給するということはないと判断される可能性が大きいですから、最低限規程は作成しておきましょう。
ところで、この従業員に対する見舞金に関し、新型コロナウイルスの罹患者などに対する事例が、国税庁から公表されました。ここでは、慶弔規程に基づき、従業員等やその親族が新型コロナウイルス感染症に感染したため支払を受けるものや、緊急事態宣言の下において、事業の継続を求められる一定の事業者の従業員等のうち、一定の要件に該当する方が支払を受けるものは、原則として所得税が非課税となる見舞金に当たるとしています。
とりわけ、この事例で注目したいのは、社内規程である慶弔基準を改定した上で、一定の従業に対し、「5万円」を支給することとした場合の取扱いについて解説されていることです。この金額について、国税庁は課税されないとしています。
新型コロナウイルスの流行という特殊性もありますので、5万円以下なら見舞金として問題ない、と結論付けられるわけではありませんが、一つの参考として、この金額は押さえておいた方がいいと思われます。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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