HOME > 法律コラム > 「足場レンタルは安全な節税対策」は本当か?安全でないケースは?
令和2年度の税制改正で、海外中古不動産を使った節税ができないことになりました。近年の税制改正の傾向として、企業を誘致する必要性から法人税を減らし、所得税を増税するという流れですので、今後ますます個人の節税は厳しくなります。
このため、個人で高い給料をもらっている富裕層の節税ニーズが大きくなっている訳ですが、そのニーズを満たすと言われる商品の一つに、足場レンタルがあります。
足場レンタルが節税になるのは、足場を買うと一度に大きな金額の償却費が計上できるからです。将来に渡り事業に使える固定資産については、投資しても全額が経費にならず、その効果が及ぶ年数で少しずつ償却費として経費にしなければなりません。しかし、足場はその例外で、一度に支出額を経費とすることができ、結果として節税になります。
とはいえ、このようなうまい話には裏があります。それは、規模が小さい足場レンタルは、原則として給料と通算できないということです。
足場レンタルなどの節税を検討する方は、本業で多額のお給料をもらっている方がほとんどです。この高額の給与に対し、何らかの損を使って相殺することで節税になりますが、このような相殺を専門的には「損益通算」といいます。
損益通算の対象になる損は決まっており、不動産投資の損や規模が大きい個人事業の損はその対象になります。しかしながら、節税商品として購入する足場レンタル投資の損は、原則として対象になりません。この理由は、主体的に足場レンタル事業を行わないからです。
具体的に申し上げると、節税商品としての足場レンタルは、業者が節税ニーズのある富裕層からお金を集め、そのお金を使って足場を購入し、その後取引先にレンタルする、という流れを取ります。富裕層はお金を出すだけで事業に関する意思決定を行っていないことから、リスクも規模も小さい事業で損益通算を原則として認めないという取扱いになっているのです。
この点、多少事実関係は異なりますが、所得税のルールとしては、本業として事業を行えばその損は損益通算の対象になる反面、副業として余裕のある範囲で事業を行えば、それはお小遣い稼ぎと大差がないため、損が出ても損益通算を認めない、とされています。
困ったことに、足場レンタル業者は「税理士も投資しています」といった営業を行うようです。実際に投資している税理士がいるか、本当のところは分かりませんが、上記の通り原則節税は難しいですので、慎重な判断が必要になります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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