HOME > 法律コラム > 特管による税務調査は恐るるに足らず!注意すべきは付職員!
税務署には「特官」という身分の職員がいます。この特官にスポットを当てたドラマもありましたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、特官は会社でいえば課長クラスの職員です。一般企業において課長は基本的には決裁者なので、営業活動などせずマネージメントが中心ですが、この特官は営業に当たる「税務調査」を行う課長クラスの職員なのです。
このような身分の高い方が調査するので、基本的に特官は、税務調査の難易度が高いとされる大きな企業を調査します。幹部クラスの職員の調査なので格が違う、とでも税務署は言いたいのでしょうが、実はそれは単なる建前に過ぎません。
特官は、まず優先的に自分の調査先を選ぶことが出来ます。確かに、大きな企業は難易度も高いですが、その分税務調査でとれる税金も大きくなりやすいので、実は国税職員なら誰もが調査したい先です。このようなおいしい調査先を優先的に選び、自分の手柄を大きくできる役職が特官、というのが実態です。
特官の行う税務調査のポイントですが、特官ではなく、特官の下の「付職員」に注意する、というのが王道です。特官には直属の部下である特官付職員が原則1名つけられています。この特官付職員の能力で、特官の調査の難易度が決まります。
というのも、特官は幹部職員ですので、特官になる前の職歴は税務署の課長クラスの職員として、実際に税務調査に行かず部下の税務調査の決裁をしたり、若しくは内勤の部門の課長として部下を指揮していたりと、調査の現場から離れていたことも多いからです。このため、特官そのものより、税務調査の現場の最前線に立つ特官付職員の方がはるかに手ごわいことが通例です。
その他、特官の調査は細かい経費などにもうるさいという点にも注意が必要です。一般の職員が行う税務調査は、会社の規模があまり大きくない先の調査が多いこともあり、売上や原価など金額が大きいところしか見ることができず、細かい経費はスルーされることが多くあります。しかし、特官は大きな会社を調査し、かつ調査の時間も多く取れますから(通常、税務調査は2~3日と言われますが、特官は5日程度できるとされています)、細かい経費までよく見られます。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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