HOME > 法律コラム > 弁護士が語る「アイドル恋愛禁止論」
アイドルの恋愛禁止はよく知られていることで、以前からこの問題はニュースになっていました。
最近は、ある事務所が、所属するアイドルとファンとの恋愛を禁止している契約をしているにもかかわらず、ファンと恋愛したとしてファンと彼女、その親に損害賠償を求める訴えを起こすそうです。
またAKB48に所属している峯岸みなみさんも以前に恋愛禁止を破ったことを理由に丸坊主にしました。
公序良俗に反する契約は無効となるようですが、恋愛禁止はどうなのか山崎佳寿幸弁護士に話を聞いてみました。
これは,恋愛を禁止することが,公序良俗に違反しているかどうかを検討する必要があります。
公序良俗,民法90条に「公の秩序又は善良なる風俗」と定められているものの概念ですが,簡単に言うと,社会的妥当性を指すと考えられています。そして,例えば愛人契約はこの公序良俗に反する契約の代表格といえます。
ところで,現代社会では,恋愛については自由に行えると考えられています。この法的根拠は何でしょうか。
これは私なりの理解ですが,憲法24条は「婚姻は,両性の合意のみ基づいて成立」と規定されています。当事者が合意すれば,自由に婚姻できる,婚姻の自由を定めているわけです。そして,恋愛は,この婚姻の前段階であると言えます。すると,婚姻の自由が定められていることの論理必然として,恋愛の自由も保障されていると理解することができます。
ところで,憲法の規定は国民と国家の間の権利義務関係を定めるものであるので,国民相互の関係には当然には直接適用されないと一般的に理解されています。
しかし,そのような理解に立っても,婚姻は国民相互の関係で生じるものであるので,憲法24条は国民相互の関係に直接適用されると考えられます。
すると,恋愛の自由も国民相互の関係でも保証されており,この恋愛の自由を侵害する契約は,憲法が保障する自由を侵害するものなので,公序良俗に違反して無効であると理解することもできます。
ところで,アイドルの恋愛禁止と行っても,恋愛感情がそのアイドルの内心にとどまっている限り,これを禁止することはできないはずです。
他方で,アイドルという職業は人気商売であり,恋愛に絡むスキャンダルはアイドル自身にとっても大きな損失になることがあります。
このような恋愛スキャンダルを起こすことを禁止することは,アイドルとしての職業の特殊性を考えれば,許容しうるものと言えます。
従って,アイドルの恋愛禁止という契約も,恋愛スキャンダルの回避を求めるという意味であると解釈できる限度で有効であると言えると思います。