HOME > 法律コラム > 税務調査中断で暇となった国税がサポートしてれば持続化給付金詐欺は防げた
最近、持続化給付金を詐取したというニュースを多数目にするようになりました。持続化給付金については、経済産業省の審査の甘さもあって、このような問題が生じることは当然予想された訳ですが、残念なことにその予想が正しかったことが明確になったようです。
とりわけ、非常に恥ずかしい話ですが、同業者である税理士がこのような持続化補助金の詐欺にかかわっている、というニュースも見られるようになりました。仮にこのようなニュースが正しければですが、国から資格をもらっておきながら、国難を利用する税理士を絶対に許すことはできません。
持続化給付金の審査について、至る所で申し上げていることですが、この審査については国税がサポートするべきだったと考えています。他の公務員とは異なり、国税職員は税務会計の知識が多少あることはもちろん、コロナの関係で税務調査ができず、仕事がない状況だったからです。何より、国税職員は税務調査で納税者の不正な申告を見破ることを仕事としていますから、いい加減な持続化給付金の申請のチェックも得意としているはずです。
にもかかわらず、経済産業省と国税及び財務省は仲がよろしくないので、両者の協力はなく、甘い審査と給付金の給付がなされたと考えられます。
ところで、コロナの関係で暇な時間、国税職員は税務調査の研修を在宅で受けていた、と発表されています。実際のところ、国税庁などの上級官庁が税務調査の研修資料をたくさん作ったようです。しかし、おそらくこれは建前に過ぎないと考えられます。
国税内部でよく言われることですが、「研修は寝るもの」という文化が国税にはあります。実際のところ、国税職員の研修施設である和光市の税務大学校の研修では、多くの研修生が研修中昼寝しています。研修を聞いても実務に役立たないことから、このようないい加減な対応をしているのです。となると、上記在宅の税務調査研修もろくに勉強していないことは明白です。
私の経験を前提とすると、国税の研修の実態はおそらくこのようなものですから、国民の負託にこたえるためにも、そのリソースを持続化給付金のチェックに活かすべきだったと考えます。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。税務調査対策術を無料で公開中。
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