HOME > 法律コラム > 所得税だけでなく相続税も節税となる小規模企業共済のリスクとは
所得税の節税の代表例として、小規模企業共済が挙げられます。小規模企業共済は一定の個人事業主や役員が廃業や退職に備えて積み立てるもので、その掛金は所得控除の対象になります。最大で月7万円設定できますので年84万円もの控除が認められるとともに、1年以内の前納ができますから、駆け込み的な節税として、使い勝手も非常にいいものです。
更に、それは共済金を受け取る場合もメリットがあり、課税上有効な退職金や公的年金扱いで課税されることになります。
所得税にとどまらず、相続税についても小規模企業共済は有効な制度と言われます。というのも、共済契約者が死亡した場合、その相続人などに共済金が支払われますが、その共済金は相続税の課税上死亡退職金として取り扱われるからです。
死亡退職金はみなし相続財産として相続税が課税されますが、相続人が取得した死亡退職金については、原則として500万円に法定相続人の数を乗じた金額まで、非課税とされます。この取扱いが小規模企業共済の共済金にも適用される訳で、有利なのです。
なお、この非課税金額は相続税の生命保険金の非課税金額と別枠とされていますので、併せて生命保険も活用することでより大きな節税が可能になります。
その一方で、相続時のデメリットとして言われることの一つに、受取人指定ができないことが挙げられます。小規模企業共済においては、小規模企業共済法という法律において、共済金の受取人(受給権者)が定められています。具体的には、以下の通りとされ、第14順位まで定められています。
イ 配偶者(1)
ロ 子(2)、父母(3)、孫(4)、祖父母(5)、兄弟姉妹(6)、そのほかの親族(7)で共済契約者の死亡の当時主としてその収入によって生計を維持していた方
ハ 子(8)、父母(9)、孫(10)、祖父母(11)、兄弟姉妹(12)、曾孫(13)、甥・姪(14)で共済契約者の死亡の当時主としてその収入によって生計を維持していなかった方
※カッコ内の数字は受給権者の順位
とりわけ、配偶者が第一順位ですので、その共済金については、二次相続において課税されるリスクがあります。このため、配偶者が取得する場合には、二次相続で課税されないよう早めに使う必要もあります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。税務調査対策術を無料で公開中。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。