HOME > 法律コラム > 新株予約権と支配関係継続要件を元国税の税理士が解説
合併などの組織再編成を行う場合、組織再編成税制が問題になります。組織再編成税制は非常に複雑ですが、大きな柱として、組織再編成を適格・非適格に区分することが挙げられます。適格にあたると、組織再編成に対する課税が繰り延べられますので、実務上は適格組織再編成を行うことがほとんどです。
合併、分割といった組織再編成の種類ごとに適格とされる要件は若干異なりますが、基本的な考え方は共通しており、適格とされる要件はおおむね同一です。紙面の都合上全ての要件は解説しませんが、共通する適格要件の一つに、金銭等不交付要件が挙げられます。
金銭等不交付要件とは、組織再編成の対価として交付する資産は、原則として合併法人などの株式でなければならない、という要件を言います。買収のように、現金を交付することもできますが、合併法人などの株式以外の資産を交付すると、原則として適格にはなりません。
この金銭等不交付要件に関連し、一定の組織再編成に係る適格要件においては、支配関係継続要件が求められる場合があります。この支配関係継続要件とは、例えば一人株主が100%支配する兄弟会社が合併する場合、合併後の会社とその株主との間に、その100%支配関係が継続する見込みがあることを言います。
これらの要件に関連して、注意すべき問題の一つに、新株予約権が挙げられます。新株予約権は、将来その会社の株式を取得できる権利をいい、代表的なものの一つに、従業員に対するストックオプションが挙げられます。
金銭等不交付要件についてですが、適格の場合組織再編成の対価として交付できるのは合併法人などの株式だけですので、新株予約権を交付すると適格にはなりません。
とりわけ、合併法人などの存続会社が組織再編成前から新株予約権を発行している場合は支配関係継続要件上問題が発生します。新株予約権を株主以外の者に発行していれば、その新株予約権を行使されることで新しい株主が生じることになり、支配関係の継続が見込めない場合にあたるとされる可能性があるからです。
このため、新株予約権を発行している場合には、原則としてそれを解消する等所定の手続
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。税務調査対策術を無料で公開中。
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