HOME > 法律コラム > 相続税において土地の形が特殊な不整形地の評価の注意点を税理士が解説
相続税の評価で問題になる土地の評価は、路線価方式(土地の接している道路の価格を前提に評価する方法)と倍率方式(固定資産税評価額に所定の倍率をかけて評価する方法)のいずれかで評価します。このうち、路線価方式については正方形や長方形など形の整った土地(整形地)を利用に適しているとした土地として、それを前提に評価します。
一方で、間口が狭かったり奥行きが長かったりするなど、土地の利用が困難になる要因について、所定の減額が認められる反面、複数の路線に接しているなど、利用効率がアップすれば、その分増額させるという仕組みになっています。
このため、形の整っていない土地を路線価方式で評価する場合には、所定の評価減が認められており、このような形が整っていない土地を不整形地と言います。
不整形地の評価として、国税庁は4つほど評価方法を選択できるとしていますが、実務では「想定整形地」を前提に評価する、という方法が一般的ですので、この方法について解説します。想定整形地とは、不整形地を取り囲む正方形ないし長方形の土地として想定される土地を言います。このような土地を想定した上で、次に以下で計算されるかげ地割合を計算します。
かげ地割合={(想定整形地の地積)-(評価する不整形地の地積)}/(想定整形地の地積)
ここまで計算した上で、①評価する不整形地が所在する地区、②評価する不整形地の地積、③かげ地割合の3つを基準に不整形地の評価減である不整形地補正率が決まっているため、その不整形地補正率をかけて評価額を計算することになります。
ところで、先ほど間口が狭かったり奥行きが長かったりすれば、土地の減額要因になると申しましたが、このことは不整形地についても原則同様です。ただし、注意点があります。
間口が狭い場合には、間口狭小補正率という割合を乗じて計算することになり、奥行きが長い場合には、奥行長大補正率という割合を乗じることになりますが、これらの要件を満たしていても、不整形地の場合には以下の二つのいずれかで計算することになります。
1 間口が狭い不整形地 間口狭小補正率×不整形地補正率
⇒ 奥行長大補正率は使えない
2 奥行が長い不整形地 間口狭小補正率×奥行長大補正率
⇒ 不整形地補正率は使えない
全部を乗じて計算することはできませんので注意してください。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。税務調査対策術を無料で公開中。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。