HOME > 法律コラム > 地積規模の大きな宅地の要件と評価について税理士が解説(前編)
相続税の評価で問題になる宅地の一つに、地積規模の大きな宅地と言われる宅地があります。この宅地は文字通り、面積が相当広い一定の宅地を意味します。このような宅地については、最大で36%の評価減が認められます。
この地積規模の大きな宅地ですが、具体的には以下の要件を満たす宅地とされます。
1 三大都市圏においては500平方メートル以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000平方メートル以上の地積の宅地であること。
三大都市圏とは、東京・大阪・名古屋などの都市圏で一定の地域を言います。
2 以下の4つの地域に所在する宅地でないこと
(1) 一定の区域を除いた市街化調整区域
(2) 都市計画法上の工業専用地域
(3) 指定容積率が400%(東京都の特別区は300%)以上の地域
(4) 国税庁が定めた、財産評価基本通達に定める大規模工業用地に所在する宅地ではないこと。
3 国税庁が定めた路線価地域に所在する宅地については普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在する宅地であること。
なお、それ以外の地域(倍率地域)に所在する場合には、この要件はありません。
地積規模の大きな宅地については、路線価地域に所在する場合と、倍率地域に所在する場合で評価額が異なります。路線価地域の場合には、以下の計算を行います。
(路線価)×(奥行価格補正率など、宅地に係る画地補正率)×(規模較差補正率)×(地積)
地積規模の大きな宅地に特有のものは規模較差補正率です。これは地積に応じて計算される所定の割合で、国税庁の通達で計算方法が公開されています。
一方で、倍率地域に所在する場合には、以下の(1)と(2)のいずれか小さい金額で評価されます。
(1) (その宅地の固定資産税評価額)×(国税庁が定める倍率表に定める倍率)
(2) 路線価地域に所在する場合の評価額に所定の調整をして計算される金額
(2)について補足します。上記の通り、路線価地域に所在する場合の評価額はその宅地の路線価をベースに計算しますが、倍率地域には路線価がありません。このため、路線価に代えて、その地域における「標準的な宅地の1平米当たりの価額」をベースに計算することになります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。税務調査対策術を無料で公開中。
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