HOME > 法律コラム > 「時間にルーズ」や「約束を守らない」こんなことで損害賠償ってできるの?
デートに遅刻、友達との飲み会を欠席、旅行をドタキャンなど人間関係にありがちな時間のトラブル。
これは個人間だけなく、企業間同士での取引でも十分起こり得ることです。
時は金なりといいますが、仕事でも大勢の人が関わるプロジェクトでは、期日を決め、それに向けてメンバー全員が力を合わせます。一人でも遅れてしまうことで、例えばそれがメーカーなら商品が納品されない、納期が遅れることに等しく、場合によっては損害賠償になりかねません。
すみませんの一言で済む問題ではなく、場合によっては大きな損害を与えてしまうかもしれません。
今回はそんな問題について井上義之弁護士に話を聞いてみました。
契約とは、複数の人によって交わされる約束のうち、法的な拘束力があるものといえます。
例えば、A社がB社にX商品を10万円で買いたいと申込み、B社がX商品を10万円で売りますと承諾した場合、A社とB社との間には売買契約が成立します。この場合、A社には10万円を支払う義務が発生し、B社にはX商品を引渡す義務が発生します。A社(B社)が義務を履行したにもかかわらず、B社(A社)が義務を履行しない場合、A社(B社)は裁判所に訴えて勝訴判決をもらう等して、強制的に権利を実現することができます。
これに対し、法的な拘束力がなく、強制的に権利を実現することができない「単なる約束」も存在します。
もっとも、契約と単なる約束の区別は必ずしも明確ではありません。勝手に「単なる約束」だからと判断して約束を守らず、相手に損害を与えた場合、損害賠償義務を負うこともありえます。基本的には、「約束(契約を含む)は守らなければならない。」と考えておくべきでしょう。
Yさんが、幹事Xさんに旅行への参加を約束し、幹事XさんがYさんの分の宿を手配したところ、Yさんは行かないと言いだし、キャンセル料金が発生したケースで考えましょう。
この場合、幹事XさんとYさんとの間で、明示又は黙示に、幹事XさんがYさんのために宿を手配するという契約が成立していたと考えられます。幹事XさんはYさんのために自らの義務を履行したにもかかわらず、その契約の履行に伴いキャンセル料金相当額の損害を被ったのですから、その賠償を請求することができます。
これに対し、明示又は黙示に、AさんがBさんのために宿を手配するという契約が成立していないにもかかわらず、Aさんが先走ったり誤解するなどしてBさんの宿を手配し、結果キャンセル料金が発生したような場合、Aさんの損害賠償請求が認められる可能性は低いと思われます。
(1)取引先の会社との関係
会社は、債務を履行しないことにより取引先に損害を与えた場合、取引先に対して債務不履行に基づく損害賠償責任を負います。会社の行為によっては、取引先に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うこともあります。
会社の従業員は、取引先と直接の契約関係がありませんので、基本的に取引先に対して債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことはありません。但し、取引先に対して、別途、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことはありえます。
(2)勤務先の会社との関係
従業員の行為が、雇用契約上の義務に違反し、又は、会社に対する不法行為に当たり、結果、会社に損害が生じた場合、従業員は、会社に対して損害賠償義務を負います。もっとも、会社に生じた損害のどの程度を賠償すべきかは事案により様々です。