HOME > 法律コラム > 【YouTuber必見】動画の制作や編集費用の経費性を税理士が解説
ユーチューバーが人気の職業になっていることもあり、ユーチューブなど動画投稿に係る経費について問題になることが多くなりました。税務の考え方として、動画のように長期にわたって使えるものについては、その効果が及ぶ期間にわたり経費とすべき、という考えがあります。このため、ユーチューブに投稿する動画に係る経費についても、一時ではなく数年にわたり経費にするべきか。このような疑問が生じます。
この点、国税から明確に出された見解はありませんが、税務雑誌の記事などを見ると、基本的に動画作成費用については、広告宣伝費として一括で処理できると解説されています。この理由として、PR用の映画フィルムについては、固定資産である器具備品とされます。しかし、投稿する動画はフィルムとは異なりデータですので、資産とは言えないからです。
加えて、少し話は変わりますが、ホームページ作成費用に関し、国税庁は以下のような見解を提示しています。すなわち、ECサイトのようにプログラミングされたシステム部分の制作費用はソフトウエアとして5年で減価償却するべきであるものの、それ以外の部分はホームページの更新スパンが長期ではないことから、一時の経費で問題ないと国税庁は解説しています。この解説を踏まえれば、投稿する動画にはソフトウエア部分はないと考えられますので、一時の経費で問題ないと考えられます。
その他、これら以外にも、一時の経費とされる理屈があります。それは、社歌の取扱いです。ビジネスにおいて動画を活用する場合、自社商品や自社のPRに使うことが多くありますが、この自社のPRという点について、国税庁の通達には社歌の取扱いが定められており、社歌の制作費用は明確に一時の経費と規定されています。これを準用して、動画作成費用も一時の経費でいいのではないか。このように言われます。
とはいえ、国税は明確な見解を出していませんので、今後どうなるか不明確な部分も実は多くあります。税務雑誌の記事によっては、動画は一回アップロードしてしまえばほぼ永遠に使えるものですので、さすがに一括で経費とするのはまずい、といった解説も見られます。
加えて、動画投稿は自社PRだけでなく、ユーチューバーのように、広告収入目当てで行うこともあります。この場合の取扱いも、上記と同じでいいのか疑問がない訳ではありません。
いずれにせよ、原則として一時の経費で問題ないはずですが、今後の動向に注意しながら、慎重に処理してください。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。税務調査対策術を無料で公開中。
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