HOME > 法律コラム > 株主優待券の発行及び交付の税務処理について元国税の税理士が解説
株主優待券について、よく誤解を受けることの一つに、それが発行された場合の取扱いがあります。株主優待券は株主に交付されるものですので、一見すると株主への利益供与、すなわち配当であるかのように思われますが、株主優待券は税務上、原則として配当とは取り扱われません。
税務上、配当とは会社の利益の処分を意味するとされますが、株主優待券は原則として、利益の処分として交付されるものではないからです。
具体的に申し上げると、株主優待券のうち、商品券であれば、それは受け取った株主においては、所得税においては雑所得として課税され、法人税の取扱い上、配当以外の収益として課税されます。このため、配当に対する特例である配当控除や受取配当等益金不算入の対象にはなりません。
なお、消費税の取扱いとしては、配当と同様に不課税取引とされます。消費税は対価性(支払ったことに対する見返りがあること)がある場合に課税されますが、株主優待券に交付はこのような見返りがないからです。
一方で、商品券ではない割引券的なものであれば、それは交付を受けたタイミングではなく、実際に使ったタイミングで課税されると言われます。実際に使ったタイミングで、割引というメリットを享受することになるからです。
一方で、発行する企業においては、株主優待に係る費用はその内容によって通常の経費か、若しくは交際費になるとされています。
しかしながら、株主優待券は事業関係者である株主にメリットを与えることで歓心を得る目的もありますから、場合によっては原則として経費にならない、交際費に当たるとされます。
このため、交際費になる境界線が問題になりますが、一般的には、株主優待としてクオカードなどの物品や、割引率が過大である割引券的な優待券を贈答すると交際費になると言われます。なお、過大かどうかはケースバイケースの判断になりますので、専門家の意見も聞きながら慎重に判断する必要があります。
その他、交際費とされる金額は、株主優待に伴う原価の額とされることが原則です。このため、飲食店の場合には、株主優待の対象になった材料費や人件費の額が、これに当たると考えられます。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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