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所得税と個人住民税で異なる配当課税が可能となった令和3年度改正

一定の上場株式の配当等については、所得税において申告不要制度が取られています。申告不要制度とは文字通り申告しないことをいい、配当は源泉徴収されていますので敢えて申告する必要もない、という制度になっています。

一方で、このような配当を申告することも可能です。一例として、上場株式の配当は上場株式の譲渡損と通算することもできますから、申告して通算することで所得税の還付を受ける、といったこともできます。

平成29年度改正では

ところで、この配当の取扱いについて、平成29年度改正において大きな改正がなされました。従来、所得税で申告不要を選択すれば個人住民税も当然申告不要となり、所得税で申告すれば個人住民税も当然申告不要にならない、といった取扱いだったのですが、所得税と個人住民税で申告方法を変えることができるようになったのです。

その結果、以下のような有利選択が可能になりました。

1 所得税は株式の譲渡損と通算するために申告をし、源泉の還付を受ける
2 個人住民税は申告不要を選択し、配当の所得分個人住民税を減らす。個人住民税の所得を減らした結果、それを基に課される国民健康保険も減る

利用件数は多くない

このような有利選択ができるため、平成29年度改正当時はたくさん利用しようと言われたものですが、現状の実務では利用件数は多くありません。その理由は、この制度を利用する場合、所得税の申告のみならず、個人住民税の申告も必要だったからです。

現状、所得税の確定申告をすれば個人住民税の申告は不要とされますが、それは所得税の確定申告を市役所などの担当者が確認し、それに基づいて個人住民税を課税していたからです。結果として、所得税の確定申告だけで手続きが終わっているのですが、この制度を使うためには、わざわざ自治体にも申告しなければなりません。申告しないと、自治体の担当者は所得税と同じような課税方式で個人住民税を課税することになるからです。

令和3年度改正で要件緩和

このことを踏まえ、令和3年度改正においては、所得税の確定申告書に個人住民税は異なる配当課税を行う旨を記載することで、この有利選択を適用することができることとされます。記載漏れがないよう、注意したいところです。

なお、この改正は、令和3年分以後の確定申告書を令和4年1月1日以後に提出する場合について適用されます。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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