HOME > 法律コラム > 青色事業専従者のメリット・デメリットと配偶者控除等との注意点を解説
個人で事業を行う場合には、事業所得として所得税の申告が必要になります。事業所得の計算上、重要な制度の一つに青色事業専従者があります。これは、適正な記帳を行う者について認められる青色申告者について認められる制度で、一定の要件を満たす場合、その青色申告者については、その事業に専従する配偶者や子供など、いわゆる生計一親族に給与を支払ったとしても、その給与の金額を所得税の経費とすることができる制度です。
人件費は事業にとって非常に大きな経費になりますので、使い方によっては大きな節税になります。
この青色事業専従者については、大きなデメリットがあります。それは、給与を支払っている青色事業専従者である妻や子族を、配偶者控除や扶養控除の対象にすることができないということです。
法改正があって今は違いますが、一昔前は103万円の壁、という言葉が話題になりました。これは、サラリーマンの奥さんがパートなどで働いた場合、その給与が103万円に満たないときは、そのサラリーマンの配偶者控除を受けられるため、配偶者が生活費を稼ぎながら節税もできる境界となる金額を意味した言葉です。現行制度も、これと同じような壁がありますので、青色事業専従者について配偶者控除などの対象にしてしまうと、その壁を超えないような給与として安易な節税につながる恐れがあります。
加えて、青色事業専従者は給与として経費を認めていますから、それに上乗せで配偶者控除などを認めると、二重に控除を認めることになり、適切ではないと考えられます。このため、このように、青色事業専従者については配偶者控除などを認めないとしているのです。
この点、税法的には常識的なのですが、常識的であるがゆえによく間違えるのはその逆のケースです。すなわち、青色事業専従者給与を支払う事業主は、青色事業専従者給与をもらう配偶者や子供の申告上、配偶者控除や扶養控除の対象になるということです。
このため、例えば青色事業専従者である妻に多額の給与を払っているものの、自身の事業が不景気で所得金額の基準として配偶者控除の対象になれる、といった場合には、妻の年末調整等で自身を控除対象の配偶者とすることができ、妻の所得を減らすことが出来ます。
誤解が多いところですので、しっかりと押さえておく必要があります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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