HOME > 法律コラム > 扶養控除や配偶者控除を受けるための判定時期の注意点を税理士が解説
所得税の計算の仕組みとして、納税者の個人的な事情を税額計算に反映させるために、所得控除という控除が認められています。所得控除の代表例としては、納税者に配偶者がいる場合に認められる配偶者控除や、一定の扶養親族がいる場合に認められる扶養控除などが挙げられます。
配偶者控除や扶養控除については、どの時点で配偶者や扶養親族がいることになるのか、その判断のタイミングが問題になります。その判断時点について、税法上は所得税の計算期間である暦年の末日、すなわち12月31日となります。
このため、扶養していた娘が年の中途で結婚して家を出て扶養から外れる、といった場合には、その年においてその娘を扶養控除の対象にすることができません。
とはいえ、このルールが常に適用されるとは限りません。なぜなら、扶養親族などが年の中途に死亡するといった場合があるからです。税務上はこの点、その死亡の時点で扶養親族の要件を満たしているとすれば、扶養控除の対象になるとしています。
ところで、扶養控除や配偶者控除などについては、控除対象となる親族や配偶者について、年間の合計所得金額が48万円以下、といった所得制限が設けられています。ただし、年の中途で亡くなるといった場合については、1年間の所得ではないものの、年換算して上記の所得制限の金額を判断する必要はないとされています。
同様に、扶養控除や配偶者控除の控除額について、月割する必要はないとされています。
加えて、準確定申告を行う場合も問題になります。準確定申告は納税者が死んだ後に行われますが、その申告期限は相続の開始があった日の翌日から4か月以内とされています。このため、原則的な扶養控除等の判断時期である12月31日では、扶養控除等の対象者を判断することができません。
この点、準確定申告の場合は納税者の死亡の時の現況で扶養親族等を判断することとされています。
ただし、年間の合計所得金額が48万円以下、といった控除対象となる親族や配偶者の所得制限については、一年間の所得を見積もって判断することになります。このため、死亡時までの合計所得金額で判断することはできません。
一方で、扶養控除や配偶者控除の控除額について、月割する必要はありません。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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