HOME > 法律コラム > 【令和3年10月】郵便の輸出免税要件がどう変わるか元国税が解説
よく知られた話ですが、輸出に対しては消費税が免除されますので、輸出売上が大きい会社は消費税が還付されることが多くあります。この輸出ですが、船に荷物を積んで輸出するような場合はもちろん、国際郵便を使った郵便も対象になります。このため、EMSを使って小口の商品を郵送する、と言った事業者についても、消費税が還付されることが多くあります。
輸出による消費税の免除(輸出免税)については、その適用上「輸出証明書」が必要になります。典型例は、輸出する際に税関長から交付される輸出許可証です。この輸出証明書について、郵便は特別な取扱いが設けられています。
具体的には、輸出する資産の価額が20万円以下であれば、輸出証明なしで帳簿に輸出した旨を記載するだけで輸出免税が認められる、というものです。輸出証明書が必要になるなら、その保存等の手間が発生しますが、帳簿だけでOKのため、非常に簡便な手続きとなっています。
なお、これは郵便物の取扱いですから、宅配便扱いのDHLには適用されません。このため、DHLについては、金額を問わず、輸出証明書の保存が必要になります。
ところで、郵便物についての、この簡便な取扱いは令和3年度改正で見直されることとなりました。具体的には、令和3年10月1日以後に行われる取引については、金額に関係なく、輸出証明書の保存が必須になります。
このような改正が行われる理由として、この20万円という基準を悪用して、消費税の還付を受けようとした事例が多くあるから、と言われています。一例として、実際には20万円を超える資産を輸出しているのに、20万円以下であると仮装をして、輸出証明書の保存をせずに消費税の還付申告をした、といった事例があると耳にしています。輸出証明書の保存がなければ、国税としても輸出の事実を確認することが難しいので、仕方のない改正と言えそうです。
このため、令和3年10月1日以降は、郵便による輸出について処理を見直して輸出証明書の保存が必要になる訳ですが、具体的にどのような書類を保存するべきかが問題になります。この点、税務雑誌の記事などによると、郵便物の引受証及び発送伝票の控え等がこれに該当するということです。
早いうちから対応できるよう、早期に処理を見直すこととしましょう。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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