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居住用財産の3千万円控除の要件「所有者として居住」は見落としがち

一定の要件を満たす居住用財産の譲渡について認められる、譲渡所得の3千万円控除について、失念しやすい要件の一つに、「所有者として居住」していた居住用財産を譲渡するという要件があります。国税庁のホームページには、以下のようなケースは3千万円控除の対象にならないと解説されています。

3千万円控除の対象にならないケース

(1) 夫が所有している家屋Aに、妻と同居
(2) 家屋Aを売却するため、家屋Bに引っ越し
(3) 夫は家屋Aを売却する前に、死亡し、妻が家屋Aを相続
(4) 妻が家屋Aを売却

妻の家屋Aの譲渡が本特例の対象にならないのは、妻が居住していた時の所有者は夫であるため、妻は「所有者として居住」したことがないからです。このため、本特例の適用に当たっては、居住と所有の関係を整理する必要があります。

なお、この要件を失念しやすいのは、本特例に関する税法の条文を読んでも、この要件が書かれていないからです。この要件は、最高裁判例で指摘された要件で、実務において影響がありますから注意が必要です。

空き家にしてからの土地の譲渡など

その他、この3千万円控除については、家屋を取り壊し、その敷地である土地だけを譲渡しても、適用できる場合があります。居住用財産の譲渡の特例というと、居住用家屋を中心に考えられた制度であり、原則として敷地だけの譲渡では対象にならないとされていることから、この取扱いを失念しがちですから注意が必要です。

具体的には、以下のようなケースは、居住用家屋の敷地であった土地の譲渡についても本特例の対象になります。

1 現に居住していた家屋が、災害等で滅失した場合
2 以下の要件を満たす場合
(1)土地等の譲渡契約が、その家屋を取壊した日から1年以内に締結されていること
(2)その家屋を居住用に使用しなくなった日以後、3年経過日の属する年の12 月31 日までに譲渡したこと
(3)家屋の取壊後、譲渡契約締結日まで貸付けその他の用に使用していないこと

ただし、家屋の一部を取り壊してその敷地の一部を売った場合、残った家屋に居住することができるときは、この特例に対象にはならないとされています。

特殊関係者への譲渡

その他、この特例は一定の特殊関係者への譲渡についても適用できないとされています。具体的には配偶者及び直系血族、そして一定の生計一親族等です。詳細、税理士に確認しながら処理する必要があります。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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