HOME > 法律コラム > 他の文書を引用した請負契約書等の印紙税の取扱いとそのルール
請負契約書など、一定の契約書に対して課税される印紙税について、よく混乱する論点の一つに文書の引用のルールがあります。契約書には、「○月○日付の見積書の通り」といった形で、他の文書を引用して作られる場合があります。この場合、印紙税の取扱いがどうなるか、問題になります。
この場合の大原則は、その引用している文書の内容が、契約書にそのまま書かれているというものです。このため、先の例でいえば、見積書の内容がそのまま契約書に書かれているものとして取り扱われます。
このため、契約書を見ただけでは内容が分からなくとも、引用元の文書を見ると工事などの請負について定めている場合には、その内容が引用先の契約書に書かれていることになりますので、請負契約に該当して印紙税が課税される場合があります。
ただし、その例外として、「記載金額」と「契約期間」は引用しないとされています。記載金額と契約期間は、印紙税で大きな影響がある契約書の契約金額を算定するために必要な要素です。このため、文書引用があったとしても、契約金額は原則引用を考えず、契約書だけで判断するということになります。
しかし、ここからが難しいのですが、上記のルールにも例外があり、1号文書(不動産の譲渡などの契約書)、2号文書(請負に関する契約書)、そして17号の1文書(売上代金の領収書)については記載金額と契約期間を引用して、契約書の印紙税額を判断することになっています。これらの文書の共通点として、契約金額に応じて印紙税額が大きくなる仕組みが取られているということが挙げられます。契約金額ない契約書は、一定の例外を除いて原則として最も安い印紙税額になりますので、それでは困るということなのでしょう。
ただし、例外はこれだけではありません。先の1号文書、2号文書でも、記載金額と契約期間を引用しない場合があります。それは、引用元の文書が印紙税の対象になる課税文書である場合です。引用元の文書も印紙税が課税されるのであれば、さすがに二重に課税されるのも酷いという理由からか、このような取扱いが設けられています。
このように、文書を引用すると印紙税の判断が複雑になります。結果として、意図せぬ課税が行われる場合もありますので、慎重に対応する必要があります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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