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老人ホームで亡くなった場合の入居一時金、各種控除、小規模宅地の特例の取扱い

老人ホームで療養していた被相続人が死亡した場合、相続税の計算上、失念してはいけない取扱いがいくつかあります。一つは、老人ホームの入居一時金です。被相続人の死亡により入居一時金が返還される場合、その返還金も相続財産になりますので、申告が必要になります。

医療費控除と債務控除

次に、老人ホームの利用料についてです。被相続人が支払うべき老人ホームの利用料のうち、相続が開始した時点で未払金があれば、それは債務控除の対象になります。債務控除は被相続人の借金を財産から控除する制度ですので、処理を忘れないように注意する必要があります。

とりわけ、ここで問題になるのはその老人ホームの利用料が医療費控除の対象になる場合です。介護老人保健施設の施設サービス利用料など、一定の利用料については、支払った医療費を所得税の所得控除とできる医療費控除の対象になります。

この医療費控除は、それを支払った方(医療の対象になる本人か、本人の生計一親族)の所得控除となります。このため、老人ホームの利用料が医療費控除の対象になる場合、被相続人が死亡する前に、被相続人が支払った利用料は被相続人が準確定申告(死亡日までの実績で行う被相続人の所得税申告)で医療費控除をすることができます。

一方で、死亡後にその利用料を、生計を一にする相続人が支払った場合、その利用料はその相続人の医療費控除の対象になります。死亡後に支払うということは、死亡時点では未払ということですから、この利用料は債務控除の対象にもなります。すなわち、相続税も相続人の所得税も減額させる効果がある訳で、失念せずに適用する必要があります。

小規模宅地の特例の対象になる場合

最後に、老人ホームで被相続人がなくなった場合、一定の要件を満たすときは、被相続人が老人ホームに入る前に住んでいた居住用宅地について、原則としてその評価額の80%を減額させる小規模宅地の特例の適用を受けられる場合があります。この場合の要件ですが、被相続人の要件としては、以下とされています。

1 被相続人が、相続開始直前において要介護認定等を受けていたこと
2 その被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居等していたこと
3 原則、入居等した後に、その宅地等が事業の用など一定の用に供されていないこと

その他、取得する相続人も所定の要件を満たす必要がありますが、この特例を使える場合がありますので、注意が必要です。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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