HOME > 法律コラム > 24時間365日完全看護が無料で提供される唯一の場所「刑務所」。出戻る為に窃盗をしたら必ず刑務所に戻れるの?!
受刑者の高齢化が進んでいます。
■一般刑法犯の高齢者検挙件数は20年間で6.8倍(犯罪白書)。
■高齢受刑者の割合は10年間で2倍に増加(矯正統計)。
■高齢受刑者の再犯期間は1年以内の者が47%と他の年齢層に比べて際立って短い(犯罪白書)。
■受刑者一人当たりの経費は300万円程度、長期刑になると1人1億円以上ともいわれています。
無事出所しても、再犯し刑務所に戻ってくる高齢者が多いという、この出戻りは「身寄りも無ければ仕事もない。だから刑務所の方が居心地が良い」という問題を抱えています。
今回はこの高齢者による刑務所への出戻り問題について加塚裕師弁護士に話を聞いてみました。
刑務所に出戻るために窃盗などを犯した場合、必ず刑務所には入れるかどうかという点については、再度の実刑により再び刑務所にて服役することになる可能性が極めて高いですが、必ずという断定はできないと思われます。
刑務所出所後の再犯については、犯した犯罪の程度、出所後再犯までの期間、犯行に至る経緯、被害者の処罰感情などを踏まえて総合的に処罰の内容が決められることになります。
この点、一般的に言えば、実刑判決を受けて服役したことがあるにも関わらず、再度犯罪を犯したということは、犯罪傾向が進んでおり、更生の意欲に乏しいと評価され、再度実刑に処せられる可能性が高いと思われます。
また、窃盗に関しては、常習的にこれを行った場合、通常の窃盗罪に比べ、重く処罰されることになります。
すなわち、盗犯等の処罰に関する法律第3条には、常習累犯窃盗罪という犯罪類型が規定されており、これは過去10年間に3回以上、窃盗罪又はその未遂罪で懲役刑を受けた者が、新たにこれらの罪を犯した場合、3年以上の有期懲役に処するというものであり、刑法上の窃盗罪の法定刑(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)よりももくなっています。
この犯罪類型に該当する場合には、より実刑判決の可能性が高いと思われます。
高齢犯罪者・受刑者が増加している背景としては、まず一般的な背景事情として、日本の高齢者の平均寿命が延び、また高齢者人口も急激に増加していることが挙げられます。
もとより高齢犯罪者の増加はこのような一般的事情のみで説明しうるものではなく、そこには高齢犯罪者を取り巻く社会的、経済的な環境が影響しています。
まず、社会的な環境の面では、高齢犯罪者においては、犯罪を繰り返すにつれ、親族との関係が疎遠になり、単身生活を余儀なくされるなど孤独な生活状況に陥っていることが多いということを指摘することができます。
また、経済的な環境の面でも、年齢を重ねるほど就労は困難となり、経済的に不安定な状況におかれ、生活に困窮するという状況が見受けられます。
このように高齢犯罪者においては、社会的な孤立や経済的不安という深刻な問題を抱えており、このことが高齢犯罪者・受刑者増加の背景として考えられるところです。この問題に対しては、刑務所、保護観察所や地域の福祉関係機関等が連携し、刑務所在監中から、受刑者の出所後の生活支援等の取り組みを行うことが期待されるところです。