HOME > 法律コラム > 常識となりつつある分煙ですが、もしも副流煙で健康被害を被ったら何か罪に問えるの?
受動喫煙が健康に影響するかどうかの研究は1960年代後半に発表され、その後アメリカで、正式に健康被害に対するリスクとして1972年に認定されました。
日本国内でも2003年に受動喫煙の防止として「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を 講ずるように努めなければならない。」として健康増進法が施工されました。
子供や妊婦に特に影響が強いとされている受動喫煙ですが、もしも副流煙で健康被害を被った場合、罪に問えるかどうかを清水陽平弁護士に話を聞いてみました。
受動喫煙で健康被害を被った場合、考えうる刑事上の罪としては、傷害罪と過失傷害罪があります。
まず、傷害罪についてですが、傷害罪が認められるためには、その人に傷害結果(健康被害)を与えるという意思、すなわち故意が必要になります。
喫煙者は、単に煙草を吸いたいというだけであり、人に健康被害を与えようと思って喫煙をしているわけではないでしょう。とすると、故意の認定は難しく、傷害罪に問うことはできません。
他方、受動喫煙による健康被害が再三取り立たされている今日においては、喫煙者にも、傷害結果(健康被害)発生の認識可能性はあったでしょうから、過失の存在は認められる可能性が高く、過失傷害罪に問われる可能性はあります。
しかし、この場合でも、別途、健康被害の発生の原因が受動喫煙であること(因果関係)を、立証する必要があります。
健康な人であれば、多少の受動喫煙があっても、すぐに健康被害が生じるということはありません。また、受動喫煙を受けていた人が心筋梗塞、肺がん等を発症したとしても、それが受動喫煙の結果なのか、遺伝や生活習慣など他の原因によるものなのかは、明らかでありません。したがって、因果関係の立証は非常に困難です。
よって、受動喫煙が原因で健康被害を被った場合、刑事上罪に問うことは困難です。