HOME > 法律コラム > 「ピンヒールで全力で足を踏んで痴漢撃退したら足に穴が・・・」これはさすがに過剰防衛?!
総理府男女共同参画室が平成12年に発表した「男女間における暴力に関する調査」によると、交通機関や路上などで痴漢被害の経験があると答えた方は全体の48.7%となり、約半数であることがわかりました。(有効回答数1773人)
痴漢の冤罪も大きな問題として取り扱われていますが,その一方で女性専用車両の普及も進んでおります。
もしも自分が痴漢にあった時にどう対応しますか?もしくはどう対応しましたか?
今回は痴漢を撃退するその方法について、正当防衛と過剰防衛の違いを桐生貴央弁護士に聞いてみました。
私も学生のころ,痴女にあって非常に不快な思いをした事がありますので,痴漢に遭う女性として反撃したいというお気持ちも分からなくはないので,そのときに気を付けるべきことをお話し致します。
反撃というと,「正当防衛」という事を思い浮かべる方も多いと思います。
ここにいう「正当防衛」とは「急迫不正の侵害に対し,自分または他人の権利を防衛するため,やむを得ずにした行為」をいいます。
ここにいう「急迫不正の侵害」とは,不正な危険が差し迫っていることをいいますので,電車内で痴漢に遭うと言うことはまさにこの状況下にあります。
そして,この危機的状況に際して,自己の権利を守るために,防衛行為に出る事は人間本来の防衛本能ですので,犯罪とはなりません。
ただ,そうはいってもやりすぎは良くないので,やりすぎた場合には「過剰防衛」といって,犯罪は成立します。
ただ,その場合であっても,防衛行為に出たのは,そもそも相手が悪い事をしたからなので,その事情を汲みして,情状により刑が軽くなったり,または免除されることもあります。
設問の場合,痴漢というお触り行為に対して,ハイヒールやピンヒールで痴漢の足を踏みつけるなどということですが,この行為は痴漢撃退手段として手っ取り早い方法であると思います。
しかし,力を入れすぎて,相手の足の指の骨を折ってしまったりすると,場合によっては傷害罪で反対の罪を問われかねないので気を付けてください。
もっとも,この場合,そもそも痴漢が被害届を出すかという疑問もありますが,「それでも僕はやっていない。」とシラを切られるかもしれませんので用心するに越したことはありません。気を付けましょう。
また,仮に,「それでも僕はやっていない。」ということになってしまった場合,女性側としては,痴漢に遭っていると勘違いして防衛行為に出たという事になりますので,この場合には誤想防衛ということになります。
ただ,誤想防衛の場合,錯誤という勘違いにより,故意が認められませんので,犯罪とはなりません。
ちなみに,誤想防衛の場合で,相手方にひどい怪我を負わせてしまった場合,誤想過剰防衛ということになりますが,この場合も,犯罪が成立し,場合によっては罪が軽くなったり,免除されたりします。ただ,相手に怪我を負わせている以上,治療費等の負担はせざるを得ないでしょう。