HOME > 法律コラム > 「ちょっと待ったぁ!」結婚式で元彼が乱入し花嫁を連れ去る!これってどんな罪?
花嫁を教会から連れ去ることで有名な映画「卒業」。
本当にこんなことあるの?という問題はさておき、これって法律的にはどうなのでしょうか?
一般的に婚姻届は、事前に、あるいは式当日に提出することが多く(取材を重ねていくことで感じた、個人的な印象です)、正式に夫婦となった後に連れさられると、更に問題は複雑になりそうですね。
この問題について男女トラブルに強い寺林智栄弁護士に話を聞いてみました。
結論からいいますと、「略取、誘拐の罪」及び、逮捕監禁罪に問われる可能性があります。
まず、通常考えられる成人の元カノを連れ去る行為ですが、この場合には、「夫となろうとする人から自分が奪い取って、結婚したい」と考えているか、あるいは、振られた腹いせから恥辱を与える目的で、花嫁を連れ去りレイプする、危害を加えるという目的があるかのいずれかであることがほとんどと思われます。
前者の場合、元カノの方もその気になって同意してしまうこともあり得ます。その場合には、犯罪は成立しません。そうでない場合には、結婚目的略取・誘拐罪となります。
後者の場合は、ほとんどの場合元カノの同意はないといえるでしょう。わいせつ目的、または、生命身体加害目的略取・誘拐罪が成立します。
これらの犯罪は、すべて同一の条文で定められており(刑法225条)、奪い取った元カレは、1年以上10年以下の懲役に付される可能性があります。
また、元カノが未成年者だった場合には、元カノの同意があったとしても、未成年者略取・誘拐罪が、さらに成立する可能性があります(刑法224条)。
ただ、刑罰としては先にあげた犯罪の方が重いので、結局は、先ほど挙げた225条の罪で、元カレは裁かれることになるでしょう。
元カノを無理やり連れ去り、その後車や自分の部屋に閉じ込めて常に監視する状況となった場合には、逮捕監禁罪が成立します(刑法220条)。
なお、同意なくわいせつ行為や身体や生命を加害する行為が行われた場合には、もちろん、強制わいせつ罪や強姦罪、暴行罪、傷害罪、殺人罪といった犯罪が別途成立することは言うまでもありません。
まず、元カノの同意なく、元カレが連れ去ったケースでは、新郎と元カノが元カレに対して慰謝料を請求することができます。
さらに、元カノとしては、実際にわいせつ行為をされたり暴行されたりした場合には、その点についても慰謝料や治療費等を請求することが可能です。
元カノの同意があった場合には、新郎は、元カノと元カレの双方に対して慰謝料を請求することができます。
元カノとしては、婚姻届を出す前であったとしても正式に婚約をした後であれば、新郎を捨てて元カレに走った行為は、「婚姻の予約を不当に破棄した」ことになりますので、それにより新郎が被った精神的苦痛に対しては責任を負うべきこととなるのです。
なお、新郎は、婚姻届を出した後だけでなく、出す前であっても、先ほど述べた通り正式に婚約をしていたのであれば、いずれのケースでも慰謝料を請求することができますが、一般的には、婚姻届を出して新婦と正式に夫婦関係になった後の方が、請求できる慰謝料の金額は高いと考えられます。
ただ、このようなケースでは、そのような事情よりも招待客らが大勢いるところで花嫁を略奪されるという辱めを受けるという事情が精神的苦痛の程度を図るうえで重要ではないかと思われます。