HOME > 法律コラム > 会社ぐるみか従業員個人の問題か?帝国ホテルの所得隠しについて専門家が解説!
報道によると、帝国ホテルが東京国税局の税務調査を受け、1億3千万円の所得隠しを指摘され、結果として重加算税を含めておよそ5千万円もの税金をとられた模様です。注目したいポイントとして、重加算税というペナルティーを課されている点が挙げられます。
税務調査において申告すべき税額が少ないことが明らかになった場合、その税額を納めることはもちろん、併せて少ない税額の申告をしたことに対するペナルティーとして、「加算税」がかかります。
この場合、仮に税額を少なく申告した原因が不正に基づくものであれば、加算税の中でも負担が大きい重加算税が課されることになります。
帝国ホテルの所得隠しにおいては、重加算税が課せられていることから、何らかの不正取引があったと東京国税局は判断したことになります。
この点、報道を読んでみると、「13年3月末までに終える予定だった千代田区内にあるホテルの耐震工事が4月以降にずれこんだ。その際、担当者が13年3月期内に予算を執行するため、虚偽の社内報告書を作成し、業者への支払いを同期の費用に計上した。」という事実が問題になったようです。
虚偽の報告書の存在、という点からは、確かに不正行為があったと考えられますが、反面担当者が作成しているというポイントを見ますと、帝国ホテルが意図的に所得隠しをしようとした、とまで考えることは難しいでしょう。担当者はあくまで従業員であり、会社を代表する役員ではないからです。
この点、実は横領などがあった場合に税務調査では往々にして問題になります。会社にとってみれば、横領は自分の預り知らぬところで行われたため責任はない、とする反面、税務署は重加算税をかけるため、横領という不正行為を見逃せなかった会社の責任を大きくとらえる傾向があるからです。
このあたり、専門家である私たちも判断に迷うことが多いわけですが、一般的には、事実を「隠ぺい又は仮装」するという意図と事実関係があれば、重加算税はかかる、とされています。本件の場合、工事日を仮装している、というポイントから重加算税の対象とされた、と考えます。
いずれにしても、従業員の行動はあずかり知らぬ、という立場で税務調査を乗り切ることは難しく、常日頃から、内部統制の充実に努めておく必要がありそうです。