HOME > 法律コラム > 稀に見かける「痴漢冤罪は逃げるが勝ち」。でもどこに逃げる?もしも線路に逃げたら罪に問われる?
10月27日、京浜東北線内において痴漢をした男性が線路へと逃走し、各線に大幅な遅延騒動が起こりました。
目撃者によると、車内で痴漢をした男性がその他の乗客に取り押さえられたものの、駅に到着し、扉が開いた途端に、線路へ逃げたようです。これにより宇都宮線・京浜東北線・高崎線・湘南新宿ラインなどの一部区間で運転を見合わせるなど、鉄道の運行に大規模な障害が発生しました。
今回は線路内への立ち入りがどんな罪になるのか、大木秀一郎弁護士に話を聞いてみました。
新幹線の線路の場合とそれ以外の場合を区別して考える必要があります。
新幹線以外の線路の場合には、立ち入るだけでは犯罪にならないのが原則です。
ただし、態様によっては威力業務妨害罪(刑法234条)に問われる危険があります。
また、鉄道の転覆衝突等事故が生じる状態を立ち入ったことにより生じさせた場合には往来危険罪(刑法125条)に問われる危険もあります。
線路内に立ち入って、列車を停車させるなどして運行遅延を生じさせると、民事上の損害賠償責任を負う危険があります。
新幹線の場合には、新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法が存在しています。同法3条2号には、「新幹線鉄道の線路内にみだりに立ち入った者」と明記されていますので、新幹線の線路に立ち入る行為については同項同号に該当します。
したがって、同法によって、「一年以下の懲役又は五万円以下の罰金」に処せられるおそれがあります。威力業務妨害罪や往来危険罪に該当しうることは新幹線以外の鉄道と同様です。新幹線以外の鉄道の場合と同様に、民事上の損害賠償責任を負う危険もあります。