HOME > 法律コラム > 終身雇用が崩壊しつつある今、ストライキってやる意味あるの?嫌なら辞めればいい?
日本における労使関係に強く影響してきたとされる三種の神器「年功序列・終身雇用・企業別労働組合」。
その中でも特に終身雇用が崩壊し始めたこと。また頻発するブラック企業問題(違法な労働条件で若者を働かせる企業)によって「嫌なら辞める」という考え方が浸透しつつあること。これらによってストライキを起こす意味合いが薄れてきているのではないでしょうか?
今年5月に大手牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーに対して千葉県千葉市の「ちば労組」によるストライキが話題になりました。Twitterを中心に広がっていたようですが、報道によるとストライキによって閉業している店舗や工場は1つもなかったようです。
今回はストライキについて労働問題に強い高橋和央弁護士に聞いてみました。
ストライキは、労働者が使用者と労働条件について交渉する際に武器となるものです。労働者側からすると、使用者に対する要求が認められなければストライキを行うという形で、交渉を有利に展開させるメリットがあります。
もっとも、1人でストライキをしてみても,あまり効果は期待できません。ストライキを効果的に行うためには、労働組合等が十分な戦略を練るとともに、組合員らの結束が必要となってきます。
正当なストライキは、労働者の権利ですので、ストライキをしたことにより法律上の責任を負わされないとされています。しかし、実際には、「正当なストライキ」か「正当でないストライキ」かが事前に明確に判断できない場合もあります。
ストライキに参加したことで企業側から責任を追及された場合、裁判でストライキの正当性を争い、最終的には労働者の言い分が認められる判断がでたとしても、裁判で争っている間、事実上、労働者はとても不安定な地位におかれることも覚悟しなければなりません。
終身雇用を前提に、「一生この会社で働くんだ」という意思を持った労働者であれば別ですが、近時は、「そんなブラック企業は辞めて転職先を探す方がよい」という考え方も多く、ストライキを武器に企業と闘い労働条件を改善していくという考えを持つ人が少なくなっているように感じます。
もっとも、このことは、必ずしも企業側が有利になったということではありません。最近は、円満退職したはずの元従業員から未払賃金の請求を受けるという事案が目立っています。例えば、時間外手当の計算が法律の基準を充たしていなかったようなケースでは、全ての従業員に対して、一斉に過去の時間外手当の不足分を支払うとなると、中小企業では会社が倒産してしまうような莫大な金額になることも珍しくありません。このような場合、労働組合としてみれば、仮に法的には正当な要求であっても、その要求を実現することで会社自体が倒産してしまうということになると、従業員は職を失うことになりかねないという点にも配慮するでしょう。ところが、退職した元従業員からしてみれば、辞めた会社が倒産しようがそんなことは知ったことではない。むしろ、倒産の危機に瀕するような状態なら、倒産される前に、1日も早く払うべきものは払ってもらうことを考えるでしょう。企業からみると、むしろ、恐ろしい時代になってきていると言えます。