HOME > 法律コラム > 「ちょいワルおやじ」元LEON編集長の枕営業強要報道。枕営業は仕向けた会社が悪いの?強要した本人?
本日発売のFRIDAYによると、LEONの元編集長 岸田一郎氏(63)から「東京ガールズコレクション」への出演と引き換えに枕営業を強要されたと、23歳女性が涙ながらに告発したようです。
枕営業はネガティブなイメージを持たれている方も多いかと思いますが、必ずしも不道徳・不正ではありません。
性的な関係でなかったとしても、同じ仕事をするなら好意を持てる相手を選ぼうとするのは人として当然ではないでしょうか。
また好意を抱いた後に取り計らったのか、あるいは仕事を通じて好意を抱くようになったのか区別がつきにくいという点もあります。
今回は枕営業について強要してきた本人、またそれを仕向けた会社について、一般的な問題を想定して今西隆彦弁護士に聞いてみました。
正直、私個人としては道徳的にどうかと思う行為ですし、一般の方々もそのような印象を受けられると思いますが、これが罪に問われるかどうかはまた別に検討しなければなりません。ある行為が道徳に反しているからといって、常に犯罪になるとは限らないのです。
これは答える方によって答えが変わってくると思いますが、私個人としては罪に問うのは難しいのではないかと思います。
人をおどして、義務のないことを行わせると、刑法上強要罪が成立する可能性があります。
強要罪とは、生命、身体、自由、名誉、財産(以下「生命等」といいます。)に対して害を加えるとおどし、義務のないことをさせることです(刑法223条1項)。
質問のような事例の場合、おどしの対象は契約の打ち切りですが、これはあくまで所属している会社の経済的な利益であって、おどされている人個人の経済的利益ではありません。
刑法は、その人個人の生命等に対して害を加えるとおどしたのではなくても、その親族の生命等に対して害を加えるとおどした場合には、強要罪が成立するとしていますが(刑法223条2項)、会社とその社員の関係は親族ではありませんから、これにはあたりません。
そうすると、質問のような事例の場合、会社の経済的な利益を失わせるとおどして、営業に来ている社員とデートに持ち込んだとしても、強要罪にはあたらない、と考えることになります。
経済的に優位な地位を利用して、他人のプライベートをコントロールしようなどという行為は社会的にはとんでもない行為ですから、処罰されてもいいのではないかと思う方もいらっしゃるでしょうが、刑法は刑罰という社会的に重いペナルティを科す法律ですから、処罰したいからといって刑法を適用するわけにはいきません。
もちろん、会社として契約打ち切りは重大問題です。まして現在のような不況下ではなおさらでしょう。ですから、会社の上司が契約を打ち切られないようにデートをしてこいと命令してくる、ということも充分考えられます。これはいわゆるパワハラにあたるのか。
パワハラは法律用語ではありませんが、一般的には、上司がその職務上の地位や権限を乱用して、部下の人格や自由、利益を侵害することと考えられています。
誰とデートするか、あるいはしないかは、いうまでもなく、個人の自由です。この自由を職場の上司にとやかく口出しされるいわれはありません。
ですから、取引先とのデートを、上司がその地位を利用して、部下に強要すれば、当然これはパワハラになります。そういうことを行った上司は、損害賠償責任を負わなければなりません。