HOME > 法律コラム > 消費者金融としてのイメージが強い武富士。しかしそれ以外でも大変注目された事件があることをご存知ですか?
消費者金融としてのイメージが強い武富士。
そんな武富士は過払い金請求の増加に伴い会社更生手続がなされました。
しかし武富士はそれ以外でも大変注目された事件があることをご存知ですか?
ところで皆さんは「節税と脱税の違いは?」をご存知でしょうか?
恐らくたいていの人は答えることができるとおもいます。「節税というのは合法で、脱税というのは違法だろう」と。
では、「節税と脱税の間には何がありますか?」と聞かれたら、答えられる人はそう多くないのではないでしょうか。節税はシロ、脱税はクロ、その間に「グレー」なゾーンが広がっているのです。
そのグレーゾーンは、「租税回避行為」と呼ばれています。この言葉を聞いた方も多いでしょう。
租税回避行為とはそもそも、節税とも脱税ともいえない行為を指します。悪いことをやっていない(法律を守っていないわけではない)という意味で、脱税ではないにしても、法律で明確に許した行為ではなく、法律の網の目を抜けている意味では、節税とも呼べないというわけです。
租税回避行為を争った、もっとも多額な裁判が「武富士事件」です。
武富士事件とは、経営破綻した武富士の元会長夫妻から平成11年に贈与された外国法人株をめぐり、約1,600億円もの申告漏れを指摘された長男が、約1,330億円の追徴課税処分の取り消しを求めたものです。
この事件のポイントとなったのは、長男の「住所」です。贈与当時(平成12年度税制改正前)、海外居住者への海外財産の贈与は非課税扱いでした。そのため「居住地」が日本国内か海外かが争点となったのです。簡単にいえば、贈与税を払いたくないから海外に住んでいたのか、実際には日本で住んでいたのではないか、が最高裁まで争われました。
この事件は最終的に、最高裁で武富士側が勝ち、1,330億円の税金が払い戻されると同時に、利息分である還付加算金400億円が支払われたことで話題になりましたが、最高裁判決において、裁判長によるこのような補足意見がありました。
「一般的な法感情の観点から結論だけみる限りでは、違和感も生じないではない。しかしそうであるからといって、個別否認規定がないにもかかわらず、この租税回避スキームを否認することには、やはり大きな困難を覚えざるを得ない。」
つまり、武富士事件は租税回避行為ではあるが、これを否認する明確な法律がないため、否認できない、としたものです。
租税回避行為は、海外のタックスヘイブンなどを利用し、税金を不当に免れているようなイメージを持たれやすいのですが、法律に明確な規定がないものは、節税にも脱税にも分類できず、租税回避行為と呼ばざるをえない行為が多いのです。
また、租税回避行為は税務調査でも問題になることが多いので注意が必要です。
自身は節税と思っていても、税務署から「これは租税回避行為ですね」と指摘されることも多分にあるのです。