HOME > 法律コラム > 労基に報告しただけでは残業代請求は意味が無い?!労働審判は安くて早い解決方法!
近年増加傾向にある労働問題への対策として、いよいよ厚生労働省がブラック企業の取り締まりに本格的に取り組むようです。
まずはネット上での求人情報の監視から始まり、今後はそれに加えてブラック企業の求人広告をハローワークで取り扱わない仕組みを作成するとのこと。ちなみにブラック企業の判定基準は、残業代不払いなどの法令違反を繰り返しているかどうかによるようです。
少子高齢化に伴い、若年労働者が減少していく中、今後こういった対策はますます必要性を強める一方で、個人としても労働問題の解決に取り組めることが有ります。今回は、労働問題に直面した際の「労働基準監督署の役割」や「労働審判」について、労働問題に強い向原栄大朗弁護士に話を聞いてみました。
労働契約の存否や賃金・残業代に関する紛争といった個別的な労働関係事件について、迅速な手続(3回以内の期日で審理。労働審判法14条2項)で審理し、話し合いによる解決を試みつつも、もし話し合いがつかない場合には、その話し合いの内容を踏まえて審判をするという制度です。
労働審判を担当するのは、通常の裁判官(労働審判官)1名と、労働問題について専門的な知識・経験を有する専門家2名(労働審判員)で構成される労働審判委員会です。
話し合いを前提にすること、及び、労働関係の知識・経験をもつ労働審判員が手続に関与することから、事案の実態が把握しやすくなりますし、また、当事者の細かな話が丹念に聞かれる傾向にあるので、解決案の納得性が増すなどの特色をもっています。
実は、労働者側のご相談を聞いていて多いのが、既に労基署に行った、というものです。しかし、労基署の役割はあくまでも企業に労働関係法令を遵守させるための「警察」としての立場にすぎません。したがって、労働契約の存否や賃金・残業代に関する紛争といった「民事」には基本的に立ち入らないのです。
ただし、ご質問のような、賃金や残業代の未払は、刑事罰の対象となる犯罪行為ですから、労基署は、労働者からの被害申告があれば「警察」として当該企業に臨検等を行い、その内容次第によっては当該企業に是正勧告を行います。
ところが、この是正勧告とは、強制力のない行政指導でしかなく、これにより自動的に労働者が賃金・残業代を支払ってもらえるという筋合いのものではありません。したがって、企業が是正勧告を受け、労働者に対し賃金・残業代を任意に支払ってくれればそれに越したことはありませんが、任意に支払わないこともありえます。
このように、企業側の任意の支払いが望めない場合、賃金・残業代を強制的に支払わせるためには、司法の力に頼る、すなわち労働審判や民事訴訟といった手段に頼るしかありません。