HOME > 法律コラム > 優先席付近でのペースメーカー誤作動はスマホのせいだ!もしも訴えられたらどうすればいい?!
電車内の携帯電話マナーが変わりつつあります。
総務省は2013年1月に「携帯電話が心臓ペースメーカーに与える影響は小さい」と発表しました。しかし日本ペースメーカー友の会は「影響はないと会員に周知をしているが、周知は行き届いていないし、 古くからの装着者の不安を拭いきれない。電源オフは継続してほしい」と慎重です。
重要なのは「携帯電話による影響は小さい」という結果ではなく、利用者の不安を払拭できていない点かもしれません。友の会としても引き続き、周知に力を入れるべきところではありますが、もしも「ペースメーカー誤作動はスマホのせいだ!」という主張をされ、訴えられた場合はどうなるのでしょうか?清水陽平弁護士に話を聞いてみました。
まずそもそも、損害賠償が認められるためには、スマホを利用することが不法行為であるといえる必要があります。不法行為に当たるためには、簡単に言うと「損害」と「行為」があり、その間に「因果関係」があり、かつ、「故意又は過失」があることが必要です。
本件では「誤作動で死亡」という損害が発生していますし、いちおう「スマホ利用」という行為があります。
問題は因果関係があるかどうかという点ですが、本件だと「携帯の電波によって誤作動を起こし亡くなった」として、携帯の電波が原因であるという前提になっているので、これも肯定されます。
しかし、「故意又は過失」はあったといえるかは要検討です。故意がないことは明らかとしても、過失があるかですが、過失とは死亡結果が生じることについて認識し得たことです。ペースメーカーに携帯はもはや影響はないということは方々でいわれていたりしますし、そもそも「電源をOFFにしなければならない」わけでもありません。そのため、「認識し得た」といえるかは相当微妙です。そのため、責任を負うとすることは難しいだろうと思います。
なお、上記のような前提でなければ、そもそも「行為」といえるのかという疑問もあります。スマホを使うということは日常的に行われており、通常は危険性がないものと考えられています。そのため、これを「行為」といえるような危険性があるものといえるのかという問題があります。
また、仮に「行為」は認めても、本当にスマホの利用が影響を与えたのか(=因果関係)という点も、ペースメーカーに影響を及ぼすことはないとの実験結果もある以上、認めることは難しいのではないかと思います。