HOME > 法律コラム > なんと「金銭を目的とする訴訟」が9割を占める!正しい借用書の書き方を弁護士が伝授!
お金にまつわるトラブルは後を絶ちません。
裁判所による平成25年度の司法統計の中でも「金銭を目的とする訴え」は全民事訴訟のうちの9割以上を占めています。
これには二つの原因が考えられます。
一つは我々の社会生活において金銭の移動は不可欠であり、よくお金が回るからこそ、それに関連するトラブルも増えるというわけです。自動車の利用人数が増加すると交通事故発生件数も増加する例を思い浮かべてもらうと明快です。
もう一つは日本人特有の縁故による金銭貸借が多いため、事実を明記した借用書がないからです。この原因はそもそも借用書に何を書けば良いのかわからないからや、借用書を書くことで他人からお金にがめつく見られると勘違いするから、と考えられます。
そこで今回は正しい借用書の書き方と、実際これがどのような効果を持つのかについて、井上義之弁護士に話を聞いてみました。
まず借用書が正しくその効果を発揮するには、どのような要件を書くべきなのでしょうか。
『書面に最低限記載すべき内容としましては下記になります』
『(1)Aさん(貸主)がBさん(借主)に金◯円を貸し付けた旨。(2)貸付の日。(3)弁済期限。(4)借主の署名捺印』
『すべて手書きでも構わないので書面で証拠を残しておくことで紛争防止に役立ちます。また当初の約束より早く返してくれと言われた等の相談がたまにあります』(井上義之弁護士)
つまり、これさえ盛り込めばトラブルになったときに役立つわけですね。押さえておきたいポイントは、この借用書は貸す側だけでなく借りる側にとっても重要だという点です。返済期限より早く返せと貸主が要求しても、正しい借用書があれば借主は返済期限までは待ってもらえることを正当に主張できます。
次に実際に金銭トラブルが訴訟にまで発展した時に、借用書はどのような効果を持つのでしょうか。借用書がなかった時を仮定して、訴訟で貸主は勝つことができるのでしょうか。
『この場合、裁判に勝つための立証は必ずしも簡単ではありません。契約書がないと、それ以外の複数の証拠(例えば、お金を借りていることを借主が認めたメール、通帳の出金記録、経緯を説明した貸主の陳述書など)から貸し付けの事実を立証していくことになります。貸し付けの事実を証明する責任は貸主側にありますので、相手側が借りたことを認めないような場合にはかなり厳しい裁判になる可能性が高いです』(井上義之弁護士)
したがって、貸主にとって借用書は訴訟上で「動かぬ証拠」としての効果を持つということです。「借用書を準備すること=お金にがめつい」と考えられるのは幻想であり、日々のトラブルから自分の身を守るための術をしっかりと用意しておくという意味で、借用書はお金の貸し借りにおいて必要不可欠なアイテムといえるでしょう。