HOME > 法律コラム > 貸す人も、借りる人も罪に問われる学割の悪用!場合によっては退学や解雇も有り得る!?
学割は主に交通機関の運賃に適用されることで有名ですが、現在では携帯電話やソフトウェア、ハードウェア、娯楽施設、飲食店等、その提供範囲は幅広くなっています。
しかしこの学割、基本的に交付されたその学生にしか適用にならないにもかかわらず、割引率が非常に高いことから悪用するケースが跡を絶ちません。
特にこの時期は入学・卒業シーズンのため比較的、他の時期よりも多いようです。
今回は、この学割を悪用した場合、どんな罪になるのか、今西隆彦弁護士に聞いてみました。
『高校生、大学生が何かの施設を利用したり、サービスの提供を受けたりする場合、学生割引(学割)を受けることができる場合があります。通学定期や、テーマパークの割引、映画館やカラオケなどの学生料金などが典型的でしょうか。さて、学割を受けることができる多くの場合で、学生証を見せるように求められますが、学生ではない人が、学生証を使って学割を受けると、どういう罪に問われるでしょうか』(今西隆彦弁護士)
『そもそも学割が認められているのは、(おそらくですが)学生は電車やテーマパーク等のアミューズメント施設を利用する機会が社会人に比べて多い一方で、一般的にそれほど大きなお金を使える立場にないところから、そうした学生でも気軽に利用してもらえるように、学生に対して料金の割引を行ない、学生の利用者を増やそう、という目的があると思われます』(今西隆彦弁護士)
『そうすると、サービスを提供する側は、サービスの提供を受ける人が学生かどうか、に強い関心を持つ、ということになります。このような場合、学生でない人が、学生証を示して、相手方に提示した人が学生であると勘違いさせ、その人から学生だけが受けられるサービスの提供を受ける行為は、人を欺いて、財物又は利益を得たことになるので、詐欺罪(刑法第246条。10年以下の懲役)が成立することになります』(今西隆彦弁護士)
本人はちょっとした気持ちで悪用しているのかもしれませんが、実は10年以下の懲役もあり得る詐欺罪が成立すると、今西隆彦弁護士は言います。
『では、学生ではない人に対して、学生証が悪用されることを知りながら貸した人はどういう罪に問われるでしょうか。学生証を貸した人は、学生証を貸すことにより、その人が詐欺をしやすいようにしてあげるわけですから、詐欺の犯人を幇助したとして、詐欺罪の幇助罪(刑法第62条1項)に当たります』(今西隆彦弁護士)
『また、学生証を貸して、悪用するように勧めた人については、詐欺の犯人をそそのかしたとして、詐欺罪の教唆犯(刑法第61条)が成立します』(今西隆彦弁護士)
些細な気持ちで貸すことは決してよくありません。悪用した本人も、そして貸した人も罰せられるのです。
しかしここで、今西隆彦弁護士はこういった学割の悪用を行ったとしても逮捕・起訴されるかどうかは別であると言います。
『ただ、犯罪が成立するかどうかと、実際に逮捕され、起訴されるかどうかは別の話です』(今西隆彦弁護士)
『学生証の悪用の場合、その詐欺によって多額の損害が生じるということは多くの場合、考えられないと思われます。ですから発覚したときに素直に謝り、場合によっては弁償をすることによって、逮捕や起訴されないということも十分に考えられることです』(今西隆彦弁護士)
なるほど。ちゃんと誠意をもって謝罪、弁償することで許される可能性もあるということですね。
しかし「許される」と言っても、実際に逮捕された場合にどんなリスクがあるのかについても最後に明記しておかなければいけません。
『まだ成人に達していない人は最近話題にのぼることが多い、少年法の適用を受けますが、少年であるからといって、逮捕される場合は成人と同じ扱いですし、身柄を拘束されることによって、学校を退学しなければいけなくなったり、アルバイトを首になったりすることもあり得るわけですから、軽く見てはいけません。学生証の悪用は、軽く思われがちですが、以上のように非常に刑罰が重い犯罪が成立しかねない重大な行為ですから、注意して下さい』
「退学」や「解雇」にもなり得る学生証の悪用。大した罪にはならないと高をくくると、その後の人生に大きな影を落とす事にもなりかねません。あなたの回りでそんなことを考える人がいたら注意してあげるべきでしょう。