HOME > 法律コラム > レンタル店は延滞料ビジネス?!数千円のDVDが延滞料で数十万に!全部払わないとダメ?!
あーDVD返却するのをすっかり忘れていた!ーーこんな経験をした人は少なくないでしょう。
レンタルショップでは、期限までに返却を行わないと延滞料が発生します。多くのお店では1日延滞で300円と設定しているようですが、これを一年に換算すると109,500円です。新品で購入しても数千円のDVDが、延滞料だけで10万円を超えるのです。
もしも自分がそんな立場になったら払わなければいけないのでしょうか。
今回はこの問題について蓮見和章弁護士にお話を聞いてみました。
まずはそもそも延滞料金は法律的にどういった解釈がなされているのか教えてください。
『延滞料金は、通常「一日延滞した場合は◯◯円の延滞料が発生する」と契約時にあらかじめ決まっているものですが、これは法律上、債務不履行による損害賠償金と位置付けられます』(蓮見和章弁護士)
『わかりやすくいうと、DVDをレンタルする場合、法的にはお客さんとレンタルショップとの間でDVDの賃貸借契約が締結されて、決められた期日の間DVDを借りることができます。同時に、この契約により、お客さんは、決められた期日までにDVDを返却しなければならない義務を負うことになります。したがって、返却日までにDVDを返却しない場合は、お客さんが法律上の義務を怠ったことになりますので、そのことが原因でレンタルショップに損害が発生した場合、お客さんはその損害を賠償する責任が生じます。延滞料金とはまさにその損害賠償金のことです』(蓮見和章弁護士)
しかし返却しないことによって、お店にどれほどの損害が発生したかについてはその都度説明がないと思いますが、この点はどうですか。
『損害賠償というと原則として損害が発生した都度、レンタルショップが損害の金額を証明しなければならないことなるので、レンタルショップではそのような事態を避けるために貸出時にDVDの返却が遅れた際の損害賠償額を事前にお客さんと合意しておきます。そしてその金額が延滞料金と呼ばれているのが一般的です』(蓮見和章弁護士)
言葉は悪いですが、その都度証明する煩わしさを省略するために一律で延滞料を決めているのですね。
では本題である、延滞料金が高額になった場合、やはり契約違反をしているのは利用者なので、従わざるを得ないのでしょうか。
『「延滞金」の合意がある場合は、原則として、定められた延滞料金を支払わなければなければなりません。しかし、延滞期間が長期間に及びその損害額がDVDそのもの値段より著しく高額になってしまった場合にまで、その金額を支払う必要はありません』(蓮見和章弁護士)
今まさに延滞料が発生している読者にとっては、安心できる一言ではないでしょうか。
しかし払わなくてもいい理由とは何でしょうか。
『レンタルショップから個人の会員がDVDを借りる場合は、消費者契約法という法律が適用されるのですが、この消費者契約法では平均的な損害を超える部分の損害についてまで支払う旨の合意は無効であると定めており、通常事業者(この場合はレンタルビデオ店)に生じるべき損害の平均的な部分を超えた場合の延滞料金の請求はできないとされています』(蓮見和章弁護士)
平均的な損害を超えた場合は無効…これはどんな基準になるのでしょうか。
『ここでいう平均的な損害とは基本的にはDVD本体の価格を基準として、貸出期間の長さや在庫品の数等をふまえて算定されることになると思います。数十万円の延滞料金になる場合は全額しはらななくてもよい可能性が高いと思われます』(蓮見和章弁護士)
やはり新品で購入しても数千円のDVDですから、そういった価格が基準となるようです。
あとはその延滞期間と、それを貸し出している最中に在庫がないとなると、他のお客さんがかりることが出来ないため、そのあたりの損害も計算されるとのこと。
しかしそれらを全て合計しても数十万の延滞料金と比較して、損害額が少ないと予想されるため全額を払う必要がないようです。
もっとも、そもそも期間内に返却すればこういった問題も起こらないのは事実であるため、やはりルールは守るべきでしょう。