HOME > 法律コラム > 「職業選択の自由 VS ライバル会社への転職(不正競争防止法)」その転職、もしかしたら違法かも?!
「貴方の経歴に興味を持っている企業が有ります。もしよければ一度お会いできせんか?」ーーこういったヘッドハンターからの誘い文句にはついつい耳を傾けてしまうもの。
ちなみにヘッドハンターに限らず、転職は二つの選択肢に絞られます。それは同業か、あるいは異業か。今回のお話は、異業であれば、そこまで注意する必要はありませんが、問題は同業への転職です。
それはなぜか。
例えば先に述べたヘッドハンターによる誘い文句は、もしも同業からの勧誘だった場合、「貴方が勤めていた会社の顧客リストや営業ノウハウに興味を持っている企業が有ります」と言い換えることも可能であり、それは不正競争防止法に抵触する可能性があるのです。
さて今回は、同業他社やライバル会社への転職、あるいは元の職場と全く同じ業種で起業するにあたって、不正競争防止法違反にならないための注意事項を、大木秀一郎弁護士に聞いてみました。
それでは転職と不正競争防止法の関係を教えて下さい。
『まずは不正競争防止法との関係から説明します。不正競争防止法は、「不正の利益を受ける目的」や「営業秘密の保有者に損害を与える目的」で、営業秘密を使用したり、開示したりする行為を「不正競争」としています』(大木秀一郎弁護士)
『何が営業秘密にあたるかが問題となりますが、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報で、公然と知られていないもの」であれば、同法上「営業秘密」にあたることになります』(大木秀一郎弁護士)
ポイントは、営業秘密であると大木秀一郎弁護士は言います。つまりその会社が事業を運営していくで培ってきた情報全般という意味でしょうか。具体的にはどんなものが営業秘密になるのでしょうか。
『たとえば、勤務先の顧客情報(住所・会社名・電話番号等)は一般的に同法の営業秘密にあたるといえます。また、営業ノウハウについても、通常は同法の営業秘密にあたるといえるでしょう』(大木秀一郎弁護士)
営業秘密は理解できたでしょう。では具体的にどんな行為が違反になるのか、また違反になるかどうかの基準も教えて下さい。
『ライバル会社に転職後、また自ら同業の会社を立ち上げて、前職の顧客情報や営業ノウハウを用いて、顧客を奪うことは、同法に抵触する可能性が極めて高いといえます』(大木秀一郎弁護士)
『同法に抵触するのか否かの基準としては、転職又は独立した後に、営業秘密すなわち「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報で、公然と知られていないもの」を使用してまたは開示しているかどうかということになります』(大木秀一郎弁護士)
転職は、自分の強みを活かしてキャリアアップするものですが、これはその使い方を誤ると法律違反になる可能性があるということを覚えておくべきでしょう。また過去の職場で知り得た営業秘密を、自らダシに使って転職することも控えたほうが良さそうです。