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交通事故で加害者も被害者も亡くなったら、損害賠償や慰謝料は誰が請求して誰が払うの?!

交通事故において加害者の法的責任には「刑事責任・民事責任・行政上の責任」があります。この内、民事責任とは被害者が受けた経済的損害と精神的損害(慰謝料)の賠償を支払う責任を指します。

しかし死亡事故だった場合、被害者は亡くなっているため、当然のことながら本人が請求することはできません。この場合、誰が加害者に損害賠償・慰謝料を請求をするのでしょうか。
また加害者が亡くなっていたら、この損害賠償・慰謝料は誰が払うのでしょうか。
この問題について、交通事故に詳しい井上義之弁護士に聞いてみました。

相続は遺産だけが対象じゃない!「慰謝料や損害賠償を請求する権利」も相続の対象!

まずは被害者が亡くなっていた場合、損害賠償と慰謝料を、加害者に対して、誰が請求する権利を持つのでしょうか。(被害者と加害者の相続人は共に両親であるという前提で聞いています)

『両親は、原則として、被害者の財産的損害(積極的損害と逸失利益)の賠償請求権を相続しますので、損害賠償を請求する権利があります。なお、被害者死亡の場合の損害賠償請求権の相続を否定する学説もあるのですが、この学説も、両親固有の損害(得られたであろう扶養利益)の損害賠償請求権は認めています』(井上義之弁護士)

『財産的損害同様、両親は、原則として、被害者の慰謝料請求権を相続しますので、慰謝料を請求する権利があります。慰謝料についても学説上相続を否定する見解があるのですが、最高裁は、慰謝料請求権を放棄したと解しうる特別の事情がない限り、相続人は当然に慰謝料請求権を相続する旨判断しています。また、民法711条は、被害者死亡の場合について一定の近親者に固有の慰謝料請求権を定めており、両親は同条に基づいて慰謝料を請求することもできるでしょう』(井上義之弁護士)

つまり被害者の両親が損害賠償、慰謝料ともに加害者に対して請求する権利を持つということですね。

加害者が亡くなってしまったら、その支払義務は親に相続される!

しかしこのケースでは、加害者も亡くなっていますが、この場合は誰に対して請求することになるのでしょうか。

『プラスの財産だけでなく、債務も原則として相続の対象になります。従って、加害者が負担すべき損害賠償義務は、その相続人である両親に相続されます』(井上義之弁護士)

相続と聞くとプラスの財産ばかりを思い浮かべますが、借金・債務などのマイナスの財産も相続されることになるため、加害者が亡くなっていたら、その支払いは加害者の両親が負うことになると井上義之弁護士は言います。
しかしここで井上義之弁護士が、その際の注意事項にも触れてくれました。

『もっとも、両親は相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に相続放棄することができます。両親が相続放棄した場合、両親ははじめから加害者の相続人でなかったことになり、損害賠償義務を負いません』(井上義之弁護士)

死亡事故の慰謝料の相場は?

(財)日弁連交通事故相談センター東京支部の民事交通事故訴訟損害賠償算定基準によると、死亡した場合の慰謝料(被害者本人分と遺族固有の慰謝料の合計額)の目安をこのように記しています。
(1)一家の支柱:2800万円
(2)母親、配偶者:2400万円
(3)その他:2000万円~2200万円
※あくまでも目安なので、その事故の事情によって変わります。また裁判で認定される金額を前提としており、示談交渉の場合は異なります。

死亡事故の場合、大切な人を失ったことによる悲しみで冷静な判断ができません。交通事故自体の処理も勿論そうですが、場合によっては遺産分割処理なども必要となります。また上述したように相続放棄をするべきかどうかなど、それぞれのケースにおいてベストな判断が異なります。これらの精神的な負担を軽減したり、自分にとって最も望ましい解決方法を検討したい方は弁護士に相談することをオススメします。

取材協力弁護士  井上義之 事務所HP
第一東京弁護士会所属。主な活動歴「文部科学省 研究開発局 原子力課 原子力損害賠償紛争和解仲介室 主任調査官」「関東財務局 関東経済産業局 中小企業経営革新等支援機関」「第一東京弁護士会 労働法制委員会」などその他多数あり。趣味は60カ国以上を訪問してきた旅行(南極大陸も経験あり!)、キリマンジャロやヒマラヤなども経験済の登山、その他スポーツ全般。取扱分野は幅広く、依頼者のあらゆる要望に応えるために、他の士業とも連携し迅速対応を心がけています。

ライター 宇佐美明

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