HOME > 法律コラム > 4人に1人が悪意ある書込みの経験者!じゃあ例え悪い書込みでも事実だったら罪に問われない?
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表した「2014年度情報セキュリティに対する意識調査」によると、スマートデバイスを利用するユーザーの4人に1人が悪意のある投稿の経験者だと分かりました。その理由として最も多かったのは「人の意見に反論したかったから」の32.3%。その一方で前回調査から最も増加(5.4ポイント)したのが「相手に仕返しをするために」の13.2%。この調査結果を踏まえて、IPAは「インターネット上に投稿した内容次第では、その情報が広範囲に拡散し、削除できなくなることがある。一時的な感情に任せた投稿をしないよう、冷静に行うことが必要である。」とまとめています。
スマートフォンユーザーの低年齢化が進むことでこういった傾向は益々強くなることが予想されますが、今回は悪意がなく、起こったことや事実をそのまま書き込み、それが結果的に誹謗中傷になってしまった場合でも罪に問われるのかどうかを、ネット上での誹謗中傷対策に強い清水陽平弁護士に聞いてみました。
まずは名誉毀損になるかどうかの要件を教えて下さい。
『名誉毀損の問題を生じるためには、ある書込みが人の社会的評価を低下させるものであることが必要です。そして、仮に社会的評価の低下が生じても、(1)公共の利害に関する事実であり、(2)公益を図る目的があり、(3)当該書込みが真実であるか、真実であると信じる相当な理由があれば、名誉毀損になりません』(清水陽平弁護士)
では事実をそのまま書き込み、それが誹謗中傷になった場合はどうでしょうか。
『起こったことや事実をそのまま書く場合、(3)を満たしますし、そのような場合(1)、(2)については通常は問題にされないのではないかと思われます』(清水陽平弁護士)
『もっとも、誹謗中傷をしている人については、別途、名誉毀損等が成立するかどうかを検討する必要があります』(清水陽平弁護士)
ネット上への投稿において、度々問題になるのは飲食店等に対するレビューです。そのお店を利用するかどうか検討するユーザーはそういった書き込みを当然参考にしますが、悪いレビューがあると客足が遠のき、お店の売上が下がることも十分考えられます。
「不味い!」や「接客態度が悪い!」などは主観も入り混じりますが、こういった書き込みによってお店の売上に影響を与えた場合はどうでしょうか。
『上記と同様です』(清水陽平弁護士)
『特に、接客態度がどうであったのかというところは、人によって受け取り方もかなり違うところです。そのため、このような意見や論評をするものについて責任を問うていくことは無理筋といわざるを得ないと思います』(清水陽平弁護士)
やはり責任を問うことは難しいと清水陽平弁護士は言います。ではお店としては泣き寝入りしかないのでしょうか。できることがあれば教えて下さい。
『実際に責任を問おうとすれば、まずは誰が書いているのかということを特定する必要がありますが、そのためには書込み内容について、(1)公共の利害に関する事実でないこと、(2)公益を図る目的がないこと、(3)前提となった事実の重要な部分において真実でないこと、(4)人身攻撃に及ぶなど意見・論評としての域を逸脱していることを立証することが必要になります』(清水陽平弁護士)
『事実をそのまま書いたということは、実際にそのように受け取られる態度だったということと思われ、この立証をすることは難しいだろうといえます』(清水陽平弁護士)
普段の日常会話のようにネットに書き込みをする若者。悪意がある書き込みが増えるのは一見当然のように思えます。また以前からそういったことは現実世界で行われており、それがただ単に表面化されたのではないかという見方も出来ます。
生まれた時からオンライン環境が整うデジタルネイティブな子どもたちに、こういった倫理意識を高めるために必要なのは、大人がオンライン上のマナーやセキュリティを学び、教育していくしか方法がないのかもしれません。