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妊婦が交通事故に遭い流産!通常の慰謝料なんて納得出来る筈がない!この場合どうなる?

妊娠中にまさかの交通事故。自分の身体は当然のことながら、何よりも心配なのは胎児への影響。流産したら?後遺症が残ったら?これらを考えると、自分一人だけの問題では到底済む筈がなく、当然通常の慰謝料をもって賠償とは認めたくないでしょう。

今回は妊婦が交通事故に遭い、もしもお腹の中の赤ちゃんが流産した場合、どんな責任が問われ、また慰謝料はどうなるのか、これらについて交通事故に詳しい井上義之弁護士に聞いてみました。

加害者の刑事責任は、妊婦を被害者とした「自動車運転過失致傷罪」

まずは交通事故の加害者について、どんな罪に問われるのか教えてください。

『加害者が自動車を運転中、過失により交通事故を起こした事例を前提としましょう』(井上義之弁護士)

『加害者が過失により交通事故を起こした結果、妊娠中の女性から生育不可能な状態で胎児が排出されてしまった場合、当該女性を被害者とする自動車運転過失致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)が成立すると考えられます』(井上義之弁護士)

では流産をさせたことに対する責任はどうなるのでしょうか。

『自動車運転過失致死傷罪にいう「人」には母体から一部露出する前の胎児は含まれませんので、胎児を被害者とした自動車運転過失致死罪は成立しません。また、堕胎は故意犯に限って処罰されますので不同意堕胎罪(刑法215条)も成立しません』(井上義之弁護士)

お腹の中の赤ちゃんは、「人」には含まれない。つまり罪には問われないということですね。

加害者の民事責任は?

では加害者の民事責任はどうなるのでしょうか。大事なお腹の中の赤ちゃんが亡くなったことは考慮されるのでしょうか。

『加害者は、直接の被害者である女性との関係で損害賠償責任を負います。また、胎児の死亡自体も女性に対する不法行為と評価されますので、加害者は女性に対して損害賠償責任を負います』(井上義之弁護士)

交通事故自体の被害に対する損害賠償は勿論のこと、流産という事実に対する損害賠償責任もあると井上義之弁護士は言います。

『さらに、胎児の父との関係でも損害賠償責任を負う余地があるでしょう』(井上義之弁護士)

子作りは夫婦の共同作業。つまり流産は、その妊婦の夫にも精神的な損害を与えること間違いありません。そしてそれに対する損害賠償責任を生じる可能性があるとのこと。

そもそも妊婦自身の治療も非常に困難

今回は、妊婦の交通事故による流産というケースでお話しました。しかしそれ以前に妊婦自身の治療も非常に困難なことはご存知でしょうか。
「レントゲンなどの精密検査が出来ない」、「内服薬や外科治療も制限」など、自然治癒に頼らざるを得ないような状態となります。もしもお腹の赤ちゃんが無事であったとしても、妊娠中の事故自体が、様々な面で加害者からの賠償において不利に働くことがありますので、いずれにせよまずは弁護士に相談することをオススメします。

取材協力弁護士  井上義之 事務所HP
第一東京弁護士会所属。主な活動歴「文部科学省 研究開発局 原子力課 原子力損害賠償紛争和解仲介室 主任調査官」「関東財務局 関東経済産業局 中小企業経営革新等支援機関」「第一東京弁護士会 労働法制委員会」などその他多数あり。趣味は60カ国以上を訪問してきた旅行(南極大陸も経験あり!)、キリマンジャロやヒマラヤなども経験済の登山、その他スポーツ全般。取扱分野は幅広く、依頼者のあらゆる要望に応えるために、他の士業とも連携し迅速対応を心がけています。

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