HOME > 法律コラム > 同じ仕事なのに、派遣元によって給料が違うのは納得いかない!法的にどうなの?!
「同じ仕事なのに、どうしてあの人より時給低いの?!」
「求人情報サイトを見たら、私と同じ会社の同じ仕事を、他の派遣会社では時給が100円高い!」
派遣社員であれば、必ず一度や二度、同様に感じたことがあるのではないでしょうか。
実際に大手のQ&Aサイトでもこの手の書き込みは跡が絶ちません。ちなみにそれらの書き込みに対しては、以下のようなコメントが目立ちます。
「他の派遣会社と時給を比べることはタブーです」
「仕事内容ではなく、生産性を評価されて時給が高くなってるのでしょう」
「派遣会社が搾取しすぎているのでは?」
さて今回は、同じ仕事なのに派遣元によって時給が違うことが、何かの法律に触れるのかどうかを、労働問題に詳しい加塚裕師弁護士に話を聞いてみました。
単刀直入にお伺いしますが、同じ仕事なのに、派遣元によって時給が異なるのは何かの法律に触れないのでしょうか。
「結論から言うと、同じ現場、同じ職務内容なのに全然給与の金額が違ったとしても何らかの法律に触れるということはないと思われます」(加塚裕師弁護士)
「この点、労働法制の考え方として、同一の職種、同一の職務に従事する労働者に対しては、同一の条件で賃金を支給すべきという同一労働同一賃金の原則という考え方があり、ヨーロッパ諸国では広く法制度に取り入れられているようですが、日本においては明示的にこの原則を取り入れた法律の条項はありません」(加塚裕師弁護士)
今現在、この悩みを抱えた方からすれば、非常にショックな一言となったでしょう。
2013年4月にカジュアル衣料大手の『ユニクロ』を展開するファーストリテイリングが世界同一賃金を発表しました。これは、国籍問わず、全ての従業員を同じ基準で評価し、成果が同じなら賃金も同じ水準にするという考えによるものです。
今回取り扱うのは派遣会社によって異なる時給の問題では有りますが、加塚裕師弁護士が述べた『同一労働同一賃金』と似通った考え方であることは間違いなく、この傾向は徐々に浸透していく可能性を秘めているのかもしれません。
事実、加塚裕師弁護士もこのように述べています。
「日本の法制においても、同一労働同一賃金という考え方を全く考慮していないわけではありません」(加塚裕師弁護士)
「平成24年に改正された労働者派遣法の第30条の2においては、『派遣元事業主は、派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準又は当該派遣労働者の職務の内容、・・・等を勘案し、当該派遣労働者の賃金を決定するように配慮しなければならない』と規定されています」(加塚裕師弁護士)
この規定をどういう風に解釈するべきでしょうか。
「この規定は、職種、職務内容が同じである場合に、労働者ごとの賃金の格差が過度に大きくならないように派遣元事業主に配慮を求めるものに過ぎず、直接的に同一労働同一賃金の実現を義務づけるものではありません。したがって、現段階においては同じ現場、同じ職務内容で派遣元によって給料の額が異なるとしても、そのことについて法的な救済を求めることは困難と思われます」(加塚裕師弁護士)
先に述べたユニクロでは、同一労働同一賃金を実践しようとしており、それはともすると、仕事や成果に付加価値をつけられないなら、どんな人であっても低賃金でいつづけなければならないという意味でも有ります。
国籍や学歴、年齢による賃金格差を良しとする社会と、そうでない社会。あなたはどちらを望みますか。