HOME > 法律コラム > 増え続ける児童虐待を防止するために新設された「親権停止制度」を弁護士が解説!
育児は親の権利です。そして義務でもあります。民法ではこれを「親権」として規定しています。しかしその親権を濫用する「児童虐待」が増え続けています。
厚生労働省が発表した資料によると、全国の児童相談所に報告される児童虐待の件数が、毎年増え続けており、平成25年度は73765件と過去最高を記録しました。
虐待をする親の中には、親としての立場を主張し、「しつけ」や「教育の一環」などと言って、その事実を認めないことも報告されています。
今回はこの児童虐待について中島宏樹弁護士に話を聞いてみました。
虐待を、しつけと言い張り、その事実を認めない親もいるようですが、そもそも虐待とはどのように定義されているのでしょうか。
「児童虐待とは、親またはその他の養育者の作為または不作為によって、児童に実際に危害が加えられたり、危害の危険にさらされたり、危害の脅威にさらされることを指し、具体的には、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待などがあげられます」(中島宏樹弁護士)
具体的な虐待の種類をあげてもらいました。ちなみにネグレクトには育児の放棄や怠慢などが含まれます。またその他に経済的虐待・金銭的虐待と呼ばれるものもあります。
それでは虐待が事実として認定された場合、どんな罪になるのでしょうか。
「刑法上は、児童に暴力を振るった場合には、暴行罪・傷害罪、性的ないたずらを行った場合には、強制わいせつ罪、育児放棄した場合には、保護責任者遺棄罪、などに該当することになります」(中島宏樹弁護士)
「民法上は、従来の親権喪失制度に加え、平成23年改正により親権停止制度が新設されています」(中島宏樹弁護士)
親権喪失は親としての権利と義務を無期限で剥奪する制度です。しかし、場合によっては一時的かもしれない虐待に対して、親権喪失は過剰な措置であるという主張が度々ありました。
そこで2012年4月から、最長2年間の親権を停止できる、親権停止新制度が新設されました。
ちなみにこの改正において、最も重要なことは民法820条の改正でしょう。
改正前の民法820条では『親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う』としていました。
それを改正後は『親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う』とし、親権が『子どもの利益のため』のものであると、明確化されるようになったのです。
親権を親の支配権のように誤解していたことが児童虐待にもつながっていたことを考えると、ますます増える児童虐待に対して、一つのブレーキとなれるよう期待してやみません。