HOME > 法律コラム > 放送禁止用語でもある「村八分」 これって法律的にはどんな制裁があるの?
「ただいま不適切な表現がありましたことをお詫びして訂正致します」ーーテレビでこんなセリフを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。これはいわゆる「放送禁止用語」が使われたことを意味しています。
「放送禁止用語」と検索すれば、その一覧が沢山ヒットしますので、ここでは敢えて伏せますが、その中に「村八分」という単語も含まれています。
「村八分」、現在は中々聞くことがありませんが、実はこれって法律に触れる行為だということをご存知でしょうか。
そこで今回は、今西法律事務所の代表である今西隆彦弁護士に、村八分が法律的にどんな制裁があるかについて、寄稿して頂きました。
村八分という言葉を耳にされた方はいらっしゃるでしょうか。最近ではあまり聞かなくなった言葉かもしれませんね。
ごくごく簡単に村八分という言葉を説明すると、一定地域の多数の者が結束して、特定の一人又は数人に対して、将来一切の交際を断つことをいうそうです(大阪高裁昭和32年9月13日の判示による)。
葬儀(死体を放置しておくと、それを原因に疾病が発生するおそれがある)と火災(延焼のおそれ)という周囲の者に被害が及ぶ2つの事項については関わりを持つが、それ以外は関わりを持たないというふうにされることから、10-2=八分というわけです。
近隣一帯が全部知り合いでお互いのことをよく知る関係にあるような濃厚な人間関係が存在した昔の我が国では当然、村八分は恐怖でしたでしょう。
これに対して、近所付き合いが希薄になってきている近時では、あまり怖くないことなのかもしれませんが、それでも団地やマンションなどでも自治会や近隣の交流が活発なところはありますから、そういうところで村八分にされるというのは大変気の重いことでしょう。
では、この村八分をされた場合、どのようなことになるでしょうか。まず、刑事的にはどうでしょうか。
この点、先述した大阪高裁は、「いわゆる村八分の決定をし、これを通告することは、それらの者をその集団社会における協同生活圏内から除外して孤立させ、それらの者のその圏内において享有する、他人と交際することについての自由とこれに伴う名誉とを阻害することの害悪を告知することに外ならないのであつて、それらの者に集団社会の平和を乱し、これに適応しない背徳不正不法等があって、この通告に社会通念上正当視される理由があるときは格別しからざる限り、刑法第二二二条所定の脅迫罪の成立を免れない」としています。
これによると、村八分の通告が例外的に脅迫罪に当たらない場合があるようです。
その場合とは、通告を受けた者に、「集団社会の平和を乱し、これに適応しない背徳不正不法等があつて、この通告に社会通念上正当視される理由があるとき」、つまり、社会の和を乱し、それがあまりに道徳的、法律的に見逃すことができないような場合です。
民事的には、村八分のような共同絶交を不法行為とし、損害賠償を命令した例があるようです(大阪高裁平成25年8月29日)。
また、人格権の侵害に当たるとし、そうした行為を止めることができると考える裁判例もあります(新潟地裁新発田支部平成19年2月27日)。