HOME > 法律コラム > 社会保険等を未加入で働かせるブラック企業社長には、なんと最悪刑務所行きも有り得る?!
厚生労働省は15日、労働環境が劣悪な「ブラック企業」の中で、違法残業が複数の事業所で行われている大企業は、書類送検される前であっても、企業名を公表すると発表した。
以前であれば、是正勧告をしたにもかかわらず、それに従わず、書類送検した企業を対象としていたが、その適応範囲を広げたようだ。塩崎恭久厚労相は「名前を公表される企業の行動は今までと違ってくるはずだ」と述べた。
さて今回は、事業主として義務である労働保険・社会保険の加入を怠っている事業主にどんな罰則があるのか、また実際にそういった立場で働く方が、保険未加入の状態で怪我などをした場合にどのような保障がされるのかを飛渡貴之弁護士に聞いてみた。
そもそも労働保険と社会保険の加入義務の条件とはなんだろうか。
「雇用保険は、正社員がいれば、労災保険は、同居の親族以外の労働者が一人でもいたら加入しなければなりません。共に、労働者に必要とされる最低限の保証ですから、原則加入する義務があります」(飛渡貴之弁護士)
社会保険の加入にあたっては一定以上の勤務時間と雇用期間を満たすことも必要となるので、全ての労働者が対象となるわけではない。しかしこの条件を満たしているならば、加入は義務となる。加入していない場合は法律違反である。
では未加入の場合の罰則とはなんだろうか。
「法律上の罰則として、懲役と罰金があります」(飛渡貴之弁護士)
健康保険法208条、厚生年金保険法102条は六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金、雇用保険法83条では六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金とそれぞれ規定されている。
つまり最悪の場合、懲役刑も有り得るということだ。
しかし労働者にとって、一番大きな問題は、未加入時に労災事故が発生した場合である。
「怪我をしてしまった人にとっては、補償をしてもらうことが重要ですよね」(飛渡貴之弁護士)
「事業者が労災保険未加入であっても、保険金は請求できます。労災保険は、政府が管掌して労働者を守るために作られたもので、保険金の原資として、事業者から徴収しているに過ぎません。ですから、事業者が、労災保険未加入かどうかは問題とならず、労災保険の補償は受け取れます」
これを見て安心した方は多いだろう。しかし本当の意味での安心はブラック企業が一つでも減っていくことだろう。冒頭で述べた企業名公表以外にも、2015年春から、国税庁の徴収データを使って、未加入の会社への指導を強化するといった報道もあり、今後に期待したい。