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家賃収入がある方は必見!「建物だけを法人化」という所得税・相続税節税の王道が実は危険?!

個人の不動産投資家の所得税の節税のひとつとして、所有するアパートと土地のうち、アパートだけを自分が経営する会社に譲渡する、というスキームがあります。法人化すると節税になる、という話を聞いたことがある方も多いと思いますが、個人で賃料をもらうよりも、法人で賃料をもらったほうが節税の可能性は広がります。

このため、本来ならアパートも土地も法人に譲渡したいところですが、土地も譲渡すると多少リスクが大きくなると言われていますので、敢えてアパートだけを譲渡する、というやり方が非常に多いのです。

譲渡する時は時価で行う

土地や建物を譲渡する場合、時価で譲渡する必要があることとされています。このため、土地については、値上がりした土地を自分の会社に売ってしまうと、取得価額と売却時の時価の差額に対し、譲渡所得に対する税金がかかります。

一方で、建物は値上がりすることがあるものの、ある専門家の見解によると、時価は売却時点の帳簿価額でかまわない、と言われています。建物を売却した場合の譲渡所得は、売却代金から帳簿価額を差し引いて計算するとされているところ、時価が帳簿価額になるのであれば、譲渡所得がゼロになって税金はかからない、と計算されるのです。

このような話がありますので、譲渡所得に対する税金が発生しないよう、敢えて建物だけを譲渡する、というのが王道的なスキームになっています。

建物の時価と帳簿価額は違う

税務署から問題視された、という話は聞いたことがありませんが、税の基本的な考え方からすれば、建物の帳簿価額が建物の時価に一致する、ということには大きな違和感があります。このため、アパートだけ会社に譲渡すれば、譲渡所得に対する税金はかからない、というのは極めてリスクが大きいと個人的には考えています。

専門家の見解はあるものの、その根拠は実際のところあまり明確ではありません。根拠とされる通達を見ましても、個人的には疑問が大きいと考えています。

この点、税務署から問題視されたことがないのであれば大丈夫だ、とおっしゃる方もいますが、税務署の本音としては、時価という不明確なものを計算することが極めて難しいので敢えて問題にしない、というのが正直なところなのです。

となれば、今後税務署が建物の時価を厳格にチェックする可能性もあるわけで、注意が必要です。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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