HOME > 法律コラム > 観光客に狙いを定めたボッタクリ飲食店!これって詐欺罪で訴えることは可能?!
観光地価格という言葉をご存知だろうか。
これは相場が知られた地元の人ではなく、観光客のみを対象にし、思いもよらない高額な請求をして儲ける、一種のボッタクリ行為である。
今、日本は官民ともに、2020年の東京オリンピックに向けて観光産業に力を入れているが、こういったボッタクリ行為によって、地元で真面目に商売をしているお店が頭を悩ませるケースにまで発展している。
今回はこのボッタクリ行為を詐欺罪で訴えることが果たして可能なのかどうかを向原栄大朗弁護士に寄稿して頂いた
以前、新宿の某居酒屋さんで、いわゆる居酒屋でのボッタクリが話題になりました。
『ボッタクリ』というのは明確な定義がないのですが、要するに、最初提示した条件よりも高額な料金を請求し、その取り立てのために粗野・乱暴な言動を用いたり、あるいは客から預かった所持品を隠匿するなど迷惑を覚えさせるような方法を用いることをいうものと考えられます。
これに対し、詐欺罪(刑法246条)の構成要件は、以下のとおりです。
① 相手を騙し(欺罔行為)
② 相手が錯誤に陥り
③ 錯誤に乗じて
④ 財物を交付させること
⑤ (1)〜(4)の間に因果関係があること、そして行為時にこれらの事実について故意があり、かつ不法領得の意思があることです。
そして、いわゆる『ボッタクリ飲食店』では、以下の流れで客を勧誘しています。
(1) 客引きが、有利な条件を示して客を勧誘する。
(2) 店で、実際の条件を提示する」
(1)の行為によって、客は騙されて錯誤に陥っています(上記①②③)。
が、ここでお金を払ったりしているわけではありません(上記④)。
そして、(2)においては、入店時にそこで実際の高額な条件を示されているのであれば(ここがポイント※)、客はしぶしぶながらそれに応じていることになるので、そもそも上記①がありません。
※もし退店時になって初めて実際の高額な条件を提示されているのであれば、(1)と(2)の共謀が認定される限り、詐欺罪の共同正犯が成立する余地がないわけではないと個人的には考えます。
いずれにせよ、詐欺罪の成立はハードルが高く、いわゆる一般的な「ボッタクリ居酒屋」の場合は同罪での立件は困難と思われます。
しかしながら、その穴を埋めるように、一部の都道府県ではいわゆる「ぼったくり防止条例」が制定されています。