HOME > 法律コラム > 給料を高く設定し、法人税節税をしている企業は要注意!
「日本の法人税は高い」
財務省によると、日本の法人が平成26年度以降に支払う国と地方をあわせた税金の割合は34.62%。アメリカのカリフォルニア州の40.75%より低く、フランスの33.33%と同程度ですが、一方で、アジア各国の税率を見ると、中国が25%、韓国が24.2%、シンガポールが17%と、日本より税率が大幅に低いことも事実です。
しかし、法人税が高いかどうかは、ただ単純に表面的な法人税率だけで比較できません。
例えば、シンガポールの法人税率は確かに17%なのですが、新規の会社や利益の小さい企業には優遇措置があり、さらに、研究開発、知的財産権登録、知財権の取得、設計、自動化装置・ソフトウエア、社員の能力向上研修費など認定された6分野に投資すると、企業は「生産性・革新クレジット(PIC)」として各分野の投資額の400%相当額(40万S ドルを上限)を損金算入できるなど、総合すると、実際にはほとんどの会社の実効税率が10%を切るといわれています。
つまり、税率のみならず、税金の計算方法まで考えると、実質的に日本の法人税負担額は大きいと考えられます。
これらの現状から日本政府は、2015年度(来年度)から法人税の実効税率を20%台に引き下げる方針を固めています。
法人税率を引き下げることで企業活動を活発にし、経済成長を確実なものにするとともに、競争相手である諸外国に流れる投資を日本に呼び込むには、法人税の大幅な引き下げが必要と考えられています。
しかし・・・です。法人税率を下げると、税収が減ってしまうこともまた事実で、ただでさえ税収不足に悩む日本の国家財政には、マイナスに働きかねません。
というわけで、財源確保の手段として挙がっているのが、「赤字法人に対する課税」です。
東京商工リサーチが今年6月13日に発表したレポートによると、2014年3月に公表された国税庁統計法人税表をもとに、2012年度の赤字法人の割合を調査したところ、全国平均が73.50%。2011年が75.21%、2010年が75.79%だったので、赤字法人の割合は減少しつつあるものの、その割合は高止まりしています。
簡単にいえば、7割以上の赤字法人が法人税を払っていないのだから、薄く広く税金を払ってもらうことで、財源を確保しようという考えです。
しかし、一方で純粋に「おかしいな」と思うのが、7割以上の法人が赤字というこの数字。
統計上の数字なので、間違いはないのでしょうが、こんなに赤字の会社ばかりで、よく日本経済が成り立っているな、と感じるのは私だけではないはず。
経済産業省の発表によると、中小企業・小規模事業者の全企業数に占める割合は、なんと99.7%。つまり、数だけでいうと、大企業は全体の0.3%に過ぎず、いくら大企業が黒字であっても、中小零細の赤字割合が大きい方がインパクトは大きくなるわけです。
また、中小企業のほとんどはオーナー企業で、自分たちの給料(役員報酬)を自ら決めているわけです。
オーナー(自分)の給料が高いという理由で、法人(自分の会社)が赤字になっても、オーナーが損をしているわけではありません。つまり、赤字法人が多い理由の1つは、「オーナーである役員の給料が高い」とも考えられるのです。
自ら給料を高く設定して、法人税を払わない中小企業に、どこまで課税できるのか、ちょっと注目したいポイントです。