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「LINEで仕事を発注」→「未読なんでまだ受けてません」これって成立するの?!

最近、仕事の取引先とのやり取りにもLINEが使われることが多くなってきたようです。
たしかにLINEはメールよりも手軽ですし、複数人数で商談を手早く進めるときなどには有効なツールかもしれません。でも、その手軽さに落とし穴はないのでしょうか?

メールだと、もし「発注があったか無かったか」で取引先とトラブルが生じても、送受信の履歴をたどれば一目瞭然となることが多いのです。しかし、LINEでは、短い文や単語で受け答えすることが多いため、誤解が生じたり、曖昧な表現になってしまいがちです。

星野法律事務所の星野宏明弁護士に話を聞いてみました。

「そもそもLINEでの発注は、正式な発注として認められるのか?」

認められます。

取引先との発注は、法的には売買契約、請負契約、業務委託契約などであることを多いですが、これらの契約が成立するのに、決まった一定の形式は求められていません。

そのため、たとえ口頭でのやりとりであっても、法的には正式な受注(契約)として成立します。

結局のところ、発注したものが届かないとか、発注したものと違うものが届いたといったことでトラブルになるのをできるだけ防止するために、書面やメールで発注確認作業をしているわけです。

したがって、LINEでの担当者間のやり取りでも、法的には発注として何ら問題ありません。

「受発注のやりとりLINEでする時の注意事項は?」

発注をLINEで受けるときの注意点は、基本的には書面やメールの場合と同じです。

目的物、代金、納期限、引き渡し方法、代金支払期限、個数について、可能な限り、後で疑義が生じないように明確に記載すべきです。

特に、LINEの場合には,比較的短いメッセージをやり取りすることに適している関係で、情報が不足するおそれがあります。

例えば、数字が「150」書かれているだけでは、前のメッセージからの文脈や流れもみないとそれが代金なのか、個数なのかはっきりしないという状況も考えられます。

こうなってくると、いつもと同じ注文だろうとの思い込みや,誤解の原因となり、注文を受ける側との認識のずれにつながり、トラブルの原因となります。

LINEで、発注する際には、メールのような長文に適さない分情報量が少なくなりがちであることを十分押さえ、メールやFAXでの注文以上、発注内容を明確に記載するように努めて下さい。

トラブル後に裁判で争う場合にも、曖昧な記載は、不利な認定に直結します。

「未読」であれば、「まだ発注を受けていない」と言い張ることはできるのか?

基本的には、発注は、相手方に意思表示が到達してはじめて効力を生じます。

ビジネスの世界では、注文後、売主(受注者)からの拒否の回答がない限り、受注は成立したものとして扱う基本契約や商慣習が一般に成立しています。

しかし、こうした基本契約や商慣習も、そもそもの発注が受注者に届いていない場合には適用されません。

したがって、相手が未読である場合には、注文が届いていないものと認定され、故意に読まなかった場合でも、裁判では受注契約は不成立であると判断される可能性が高いでしょう。

大事な案件では、LINEに加えて、FAXやメールでも重ねて発注をかけたり、電話確認をすることも検討すべきでしょう。

「今後、ビジネスでのLINE利用が増えた場合、どのような問題が起こる可能性があるか?」

LINEは、メールと比べて、既読確認ができる、外出先携帯でも確認しやすい、短文のメッセージをやり取りしやすい、などといったメリットがあります。

他方、業務で使用する上での最大のデメリットは、誤解が生じやすいという点だと思います。

短文のLINEでは、注文に必要な情報不足しがちとなり、双方の合意のずれが生じるおそれがあります。

気軽にスタンプを利用することもできますが、特に解釈する人によっていろんな意味に受け取れるものには要注意です。

受注契約は、法律上は、形式の縛りがないので、口頭でもLINEでも発注手段は何でもよいことになっていますが、注文者と受注者の誤解は取引上の法的紛争の最大の原因ですので、余分なトラブルを防止する意味でも、明確に注文条件を記載するよう心掛けるとよいでしょう。

取材協力弁護士  星野宏明 事務所HP
東京弁護士会所属。星野法律事務所 共同代表。千葉県立東葛飾高校を卒業。早稲田大学法学部を大学院飛び級のため退学。その後慶応義塾大学大学院法務研究科を修了。北京大学へ語学留学し、中国広州市にある敬海法律事務所にて実務研修。弁護士法人淀屋橋・山上合同 勤務を経て独立開業。一般企業法務,顧問業務,中国法務,不貞による慰謝料請求,外国人の離婚事件,国際案件,中小企業の法律相談,ペット訴訟等が専門。中国語による業務も対応可能。

ライター 長澤正嘉