HOME > 法律コラム > 他人名義で契約したりローンを組むのって、本人の同意があれば罪に問われない?
私文書偽造という犯罪をご存知だろうか。これは、Aさんが、Bさんの同意を得ずに、文書の名義人をBにすることで成立する犯罪である。
例えば「後一点で免停だから、変わってくれないかな?頼むよ!」と、親友や配偶者から懇願され、快諾したとしよう。恐らく多くの人が同意しているから、私文書偽造罪は成立しないと思われるかもしれない。しかし交通違反切符の場合、実際に交通違反を行った人物以外の名義人を身代わりに書くことは禁止されているため、私文書偽造罪が成立するのが判例となっている。似たようなケースとしては替え玉受験などがある。
同意があったとしても私文書偽造罪となりえることは理解していただけと思うが、例えば商品購入時の契約やローンを組む等、これらも同意があれば、私文書偽造罪は成立しないのだろうか。あるいは成立せずとも他の犯罪になる可能性はあるのだろうか。
この問題について、星野法律事務所の代表である星野宏明弁護士に伺ってみた。
早速であるが、同意を得た上で、他人名義で契約することは私文書偽造罪になるのだろうか。
「他人名義の契約は、代理人によることが適法である以上、同意があれば私文書偽造罪は成立しません」(星野宏明弁護士)
「ただし、契約当事者と偽っている場合には、契約相手に対する詐欺罪となる可能性があります」
同意があるため、私文書偽造罪にはならないが、契約相手に対しての詐欺罪を問われる可能性があるという。
では次に、同意を得た上で、他人名義でローンを組むことはどうだろうか。
「ローンの申込書も、同意がある場合には、私文書偽造とはなりませんが、借主の同一性を偽って信用審査を誤らせて借入を受けた場合は、詐欺罪が成立する可能性があります」(星野宏明弁護士)
ローンの場合、返済能力を満たすかどうかの信用審査が入る。つまり自分自身の名義では、その審査が通らないとわかった上で、他人名義を利用すると詐欺罪の可能性があるということだろう。
私文書偽造罪は、本人が同意しているなら問題無いと考えてしまいがちだが、そもそも偽ること自体が誰かを騙す行為となるかもしれないのである。ちなみに私文書偽造罪は3月以上5年以下の懲役であるが、詐欺罪はそれ以上に重い、10年以下の懲役であることも忘れてはならない。