HOME > 法律コラム > 上司「命令に従わないならクビにするよ?」ーー業務命令拒否の解雇基準を弁護士が解説!
使用者には、労働者に対して、指示・命令できる権利が存在する。そして、労働者はそれに従う義務を負う。 つまりその義務を果たさなければ、就業規則の懲戒項目の規定に沿って、何らかの処分が下されることになる。
例えばお茶くみを拒否したら何らかの処分が下るのだろうか。
実際にあった話であるが、お茶くみを指示された社員がそれを拒否し、解雇されたケースがあった。その社員はお茶くみを拒否したことが解雇につながるのは不当であると訴えた。結果的に裁判所は「お茶くみは業務ではない。業務でない命令だから拒否しても問題ない」とし、解雇を無効とした。
実は業務命令を拒否した場合の解雇基準は明確に決まっていない。つまり、正当か不当か争うことになった場合、最終的に裁判所が判断することになる。しかし、大体の枠組みは存在する。今回は、その判断枠組みについて加塚裕師弁護士に伺った。
「業務命令に対して拒否をした場合、解雇になるかならないかについて画一的な基準があるわけではありませんが、大まかな判断枠組みは以下の通りです」(加塚裕師弁護士)
「まず、前提として業務命令それ自体の有効性が必要となります。業務命令の有効性については、各命令の内容に応じて必要性、合理性を考慮し判断されることになります」(加塚裕師弁護士)
まずはこう話す加塚裕師弁護士。命令自体に有効性があるか否か、先ほどのお茶くみのケースが正にそうである。つまり、お茶くみは業務命令として成立していないということだ。
では命令自体に有効性があるという前提で、解雇になるかならないかの境界線はどこにあるのだろうか。
「業務命令が有効であったとしても、解雇は労働者を企業から放逐する過酷な処分であることから、解雇の有効性は厳格に判断されます」(加塚裕師弁護士)
「具体的には、労働者による命令拒否が固執的、反復継続的で是正の余地がなく、使用者に労働契約の継続を期待しがたいような事情がある場合に解雇が認められることになります」(加塚裕師弁護士)
放逐とは、追放・クビという意味である。つまり自分の意見を主張して譲歩しようとしない、またそれを改めようとする気がないような状態ということだろうか。
使用者と労働者は平等ではない。圧倒的に使用者の立場が強いのはご存知だろう。
だからこそ、加塚裕師弁護士も言うように、解雇が正当かどうかは厳格に判断される。
もしも解雇にかぎらず、業務命令に拒否をした労働者に対して何らかの処分を下す場合は、その命令自体の有効性と、その処分を下すまでの手続きや、処分自体の妥当性など、総合的に「慎重」に判断する必要がある。もしも問題があった場合は、専門家に相談することをオススメしたい。