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妻をひき殺そうとしたDV夫の驚くべき住所特定方法とは?また教えてしまった者の法的責任は?!

今月27日、大阪府の藤井寺市で21歳無職の男性が、妻ら二人を車ではねて殺害しようとしたとして逮捕された。
この男性には、妻へのDVにより、裁判所から接近禁止命令が出ていた。
一方、妻はDV被害者を保護する「シェルター」に避難していたが、その後大阪府の藤井寺市に転居した。
この時点で、夫である男性は、妻の転居先の住所を知ることは出来ない。
しかし転居後、わずか1日で妻の新住所を突き止め、犯行に及んだのである。
なんとその方法は、男性の供述によると「インターネット通販で妻が利用していた商品の販売会社から聞き出した」そうだ。

さて今回は、この通販業者に法的責任があるかどうかを中島宏樹弁護士に伺った。

プライバシー権の侵害による、損害賠償の可能性あり!

「通販会社は、妻のプライバシー権を侵害したものとして、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります」(中島宏樹弁護士)

まずはこう切り出した中島宏樹弁護士。ではプライバシー権とはなんだろうか。

「プライバシー権は、かつては、私生活上の事柄をみだりに公開されない権利とされてきましたが、現在では、自己に関する情報をコントロールする権利とされるに至っており、妻の転居先の住所はプライバシー権の保護の対象となります」(中島宏樹弁護士)

「そうすると、通販業者は、妻に無断で、その意思に反し、新しい住所を夫に開示し、妻のプライバシー権を侵害したことになりますので、法的責任を負う可能性があります」(中島宏樹弁護士)

接近禁止令がでていたことを知らなかったことはどう考慮される?

夫と名乗り、妻の住所を聞かれた場合、思わず教えてしまいそうな可能性もあるが、その辺りはどう考慮されるのだろうか。

「もっとも、通販会社が、配偶者からの問い合わせに回答することはありうることであり、DV防止法に基づく接近禁止命令が出ていることを知っていれば格別、そういった事情を知らなかった場合には、法的責任を免れる可能性もあります」(中島宏樹弁護士)

接近禁止命令を知らなかったという前提であるならば、ある程度考慮される可能性もあると中島宏樹弁護士は言う。

個人情報保護の観点では?

ではプライバシーの侵害ではなく、個人情報保護法では今回の件、どう判断されるのだろうか。

「住所は、個人情報保護法上の『個人情報』(氏名、生年月日その他特定の個人を識別することができるもの)には該当しませんので、個人情報保護法上の問題は生じません」

夫婦に限らず子どもや親ということであれば、悪気もなく教えてしまう可能性は誰にだってあるだろう。つまり今回のような事件が、今後も起こる可能性があるということだ。ではどうすれば防げるのだろうか、詰まるところ自衛だけなのかもしれない。

取材協力弁護士  中島宏樹 事務所HP
京都弁護士会所属。京都大学法学部を卒業後、2005年に旧司法試験に合格。その後、法テラス広島法律事務所の初代所長にも就任。現在は弁護士法人京阪藤和法律事務所 京都事務所に所属。相談者に寄り添うことを信条に、冷静と情熱の絶妙なバランスを心掛け、理想の解決に迅速対応します。